
精油の抽出や蒸留酒の製造などに使われる蒸留装置には、さまざまな種類があり、用途に合わせて適切なものを選ぶ必要があります。
そのため、蒸留装置の選び方で悩んでいる方も多くいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では蒸留装置の基礎知識から用途、選び方まで解説します。
これから蒸留装置の使用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
蒸留装置とは

蒸留装置とは、混合物から純物質を分離・精製するために使われる装置のことです。
蒸留にはさまざまな手法があり、それぞれ異なる蒸留装置が使われます。
以下では、蒸留装置についての基礎知識を詳しく解説します。
蒸留装置の概要
蒸留装置では、沸点の低い成分から順番に分離できます。
混合物を加熱し液体を蒸発させて、その蒸気を冷却して凝縮させることで純度の高い物質を得るのが蒸留の目的です。
蒸留装置を利用すると、蒸留の各プロセスを効率的に進めることができます。
蒸留装置は、室内に設置できる小型のものから、プラント規模のものまで多くの種類があります。
幅広い用途に活用されており、さまざまな業界において蒸留装置は欠かせない存在といえるのです。
蒸留装置の原理・仕組み
蒸留装置とは、蒸発と凝縮を繰り返して混合物の成分を分離するためのものです。
混合物を加熱すると沸点の低い物質から蒸発するため、蒸気を冷却して液体に戻します。
凝縮された液体を収集し、残った混合物をさらに加熱して蒸気を発生させるのを繰り返します。
このプロセスをさまざまな条件下で効率的に行えるのが蒸留装置です。
蒸留には、単蒸留や分別蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留など、さまざまな手法があります。
例えば、減圧蒸留は加熱をする際に気圧を低下させて沸点を下げる手法です。
水蒸気蒸留の場合は、混合物に水を加えて加熱を行い、揮発性成分を水蒸気として取り出します。
蒸留によって精製したい物質の性質に合わせて最適な蒸留装置を選ぶことが重要です。
蒸留装置の種類
蒸留装置の主な種類と概要は以下の表の通りです。
種類 | 概要 |
水蒸気蒸留装置 | 天然物成分を抽出するのに広く用いられる |
減圧蒸留装置 | 沸点を下げることで低い温度で蒸留ができる |
精密蒸留装置 | 1回の操作で成分を細かく分けて抽出できる蒸留装置 |
薄膜蒸留装置 | 薄膜状で蒸留することで粘性の高い物質や熱に弱い物質の蒸留ができる |
例えば、水蒸気蒸留装置は、低温で成分を抽出できるのが特徴であり、精油など天然物成分を取り出すのによく使われています。
精密蒸留装置は、純粋な物質を得るためのプロセスを効率的に行える装置です。
上記以外にも、マイクロ波で対象を加熱して蒸留できる装置などがあり、用途に合わせて使い分けることが重要になります。
蒸留装置の用途

蒸留装置はさまざまな用途で利用されています。
化粧品の原料や飲料水のフレーバー、加工残さの再利用など用途は幅広いです。
以下では蒸留装置の用途について具体的に紹介します。
オイルを抽出して化粧品の原料として利用する
蒸留装置を利用すると、植物からオイルを抽出することができます。
植物に含まれているオイルは精油とも呼ばれ、健康や美容に効果のある成分が含まれているのが特徴です。
原料植物から蒸留によって得られたオイルは、化粧品の原料として利用されます。
オイルが水に溶けにくい性質を利用し、気化したオイルに水蒸気を送り込み冷却することで、オイルのみを取り出せます。
また、オイルを取り出す過程で水蒸気の中には芳香成分が残るため、芳香蒸留水として利用可能です。
芳香蒸留水はそのまま化粧水として使う他にもアロマテラピーの基材としても利用できます。
フレーバーを抽出して食品・飲料水の開発に利用する
果物やハーブなどから蒸留装置によってフレーバーを抽出し、食品や飲料水の開発に利用するケースがあります。
フレーバーの抽出を目的として蒸留を行う場合に最適な方法は、減圧蒸留です。
水蒸気蒸留では原料植物を加熱するため、デリケートな成分が劣化するリスクがあります。
特に柑橘系の植物の場合は、熱に弱く、香気成分が変質・分解しやすいです。
減圧蒸留では気圧を下げて沸点を下げることができるため、低温で香気成分を蒸留して回収できます。
減圧蒸留装置の中には、沸点を40~50°程度まで下げられるものもあるため、デリケートな植物からもフレーバーを得ることが可能です。
フレーバーは単一の成分を用いるケースは少なく、さまざまな成分を組み合わせて利用されます。
フレーバーの原料と組み合わせは無数に存在するため、他社にはない独自の新しい香りを生み出して成功している企業は多いです。
加工残さの再利用
蒸留装置を用いると本来は廃棄するはずの加工残さからオイルなど価値のある成分を抽出して再利用することが可能です。
例えば、青果加工のメーカーが製造プロセスの中で廃棄していた加工残さからオイルや芳香蒸留水を抽出して商品開発に利用した事例があります。
柑橘類など熱に弱い香り成分が含まれるケースであっても、適切な蒸留装置を用いれば上質な成分の抽出はできます。
これまで廃棄していたものを再利用できれば廃棄コストを削減できるだけではなく、売上アップにつながる可能性もあり、企業にとってメリットは大きいです。
蒸留装置の選び方や注意点

これからビジネスに蒸留装置を活用したいならば、適切な装置を選ぶ必要があります。
蒸留装置を選ぶ際には、以下のポイントを意識することが大事です。
- ポイント
- 目的に合わせて必要な仕様を明確にする
- 技術サポートやアフターサービスを重視する
- サンプル試験を実施する
- メーカーの実績や評判を確認しておくことが大事
蒸留装置の選び方や注意点について詳しく紹介します。
目的に合わせて必要な仕様を明確にする
蒸留装置を選定する際に基準となる仕様を明確にしておくことは大事です。
蒸留装置を利用する目的や予算、現場の環境などを踏まえた上で、装置の機能や外形寸法、装置の種類などの条件を決めておきます。
事前に必要な蒸留装置の仕様をまとめておくと、メーカーへの相談をスムーズに進めることが可能です。
ただし、どのような蒸留装置が目的に適しているかを自分たちで判断できないケースがあるでしょう。
蒸留装置の仕様について疑問がある場合は、メーカーに相談することをおすすめします。
技術サポートやアフターサービスを重視する
蒸留装置を導入した後、技術的なサポートやアフターサービスを受けられるかどうかは大事です。
蒸留装置の利用の仕方やトラブルなどでいつでも技術的な質問に対応してくれるメーカーを選びましょう。
定期的なメンテナンスに対応してくれるメーカーであれば、蒸留装置を長く使い続けることが可能です。
具体的にどのようなサポート体制を整えているのか、相談をする際に細かく確認しておいてください。
各サポートを受ける際に料金がかかるかどうかも確かめておきましょう。
サンプル試験を実施する
蒸留装置を用いて実際に抽出できるかどうか、サンプル試験を実施することは大切です。
メーカーから提案された蒸留装置が仕様を満たしているかをサンプル試験の結果から確認できます。
サンプル試験に利用する植物原料は、本番で使用する予定のものを用意してください。
サンプル試験によって抽出された成分に問題がないかどうかも確かめておきます。
サンプル試験の結果に問題がある場合は、別の製品を提案してもらうか、他のメーカーの装置も試してみることを検討しましょう。
メーカーの実績や評判を確認しておくことが大事
蒸留装置を提供するメーカーについて、実績や評判を事前に確認しておくことは大事です。
これまでにどのような製品を提供してきたのか、どんな顧客が製品を活用しているのかなどを確かめます。
メーカーの実績については、公式サイトで公開されているケースが多いです。
また、実際にメーカーの蒸留装置を利用した顧客の公式サイトなども確認しておきます。
当該メーカーの蒸留装置をビジネスに活用して成功した事例が豊富にあるならば、信頼できるメーカーといえるでしょう。
まとめ

蒸留装置を利用すれば、植物原料からの成分の抽出や加工残さの再利用などに活用できます。
蒸留装置には水蒸気蒸留装置や減圧蒸留装置などさまざまな種類があるため、目的に合わせて適切なタイプの蒸留装置を選ぶことが大事です。
また、多くのメーカーが蒸留装置を提供しているため、技術サポートや実績などを踏まえたうえでメーカーを選ぶことが重要になります。
熱に弱いデリケートな成分の抽出を検討しているならば、通常の蒸留装置では対応するのが難しいです。
デリケートな成分を抽出したいならば、低温での蒸留が可能なマイクロ波抽出装置をおすすめします。
マイクロ波抽出装置の導入に興味のある方は、兼松エンジニアリングまでお問い合わせください。
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