
マイクロ波は、ニュースなどで目にする機会の多い用語であり、ビジネスでの活用例は豊富にあります。
しかし、マイクロ波にどんな性質があり、どのような技術に活用されているのか知らない方は多いのではないでしょうか。
本記事ではマイクロ波の性質や技術、活用例などについて詳しく紹介します。
マイクロ波の特徴を知りたい方やビジネスで活用したい方はぜひ参考にしてください。
マイクロ波の性質

マイクロ波は、比較的短い波長で直進性の高い特徴を持った電磁波です。
さまざまな分野で活用されており、現代社会において欠かせない存在といえます。
以下ではマイクロ波にどのような性質があるのか詳しく解説します。
マイクロ波は周波数が300MHzから300GHzの電磁波
マイクロ波とは、周波数が300MHzから300GHzまでの電磁波を総称したものです。
広範囲の領域を含んでおり、周波数領域ごとに異なる用途で活用されています。
周波数とは1秒間に繰り返される波の数であり、波長は1回分の波の長さのことです。
波の速度を周波数で割ったものが波長であり、周波数と波長は反比例の関係にあります。
電波の中でも周波数が高く波長が短い帯域のマイクロ波は、幅広い分野で使用されているのです。
マイクロ波は直進性が高い
マイクロ波は波長が1mm~1mであり、直進性が高い性質があります。
直進性の高い電波とは、曲がらずに真っ直ぐ進むのが特徴です。
電波が曲がらずに真っ直ぐ進むと、伝送できる情報量を大きくすることが可能なため、レーダーや中継通信、無線LANなどに応用されています。
注意点は、水や金属などの影響を受けやすく、遮蔽物を避けるのが難しいことです。
光のように回折することがほとんどないため、到達できる距離は基本的に見通せる範囲内に限られます。
マイクロ波は気体の状態に影響されず伝搬する
マイクロ波は電磁波の一種であり、気体の状態に影響されずに伝搬できるのが大きな特徴です。
また、個体や液体、気体など物理的媒体がなくても伝搬できるという性質も持っています。
気圧や気温の影響を受けず、真空中であっても伝搬するため、宇宙空間から地上への照射が可能です。
雲を透過することができ、雨の影響も受けず、昼夜や季節を問わずに利用できます。
以上の性質があるため、マイクロ波は人工衛星やGPSにも活用されている有用な電磁波です。
マイクロ波の有名な技術

マイクロ波を活用した有名な技術を以下にまとめました。
- マイクロ波加熱
- レーダー
- 中継通信
いずれも現代人にとっては欠かせない技術であり、誰もが恩恵を受けています。
マイクロ波を利用した技術について詳しく解説していきましょう。
マイクロ波加熱
水分子をマイクロ波によって振動させて加熱する技術が普及しています。
分子同士が摩擦する際に、熱が発生することを応用した技術です。
電子レンジは、食品中に含まれる水分子を振動させて熱を発生させることで温めます。
食品に対して効率的にマイクロ波が照射される環境のため、短時間で高温の加熱が可能です。
ターンテーブルが庫内に設置されている電子レンジは、テーブルが回転することでムラなく加熱します。
また、フラットテーブル式の製品も登場しており、庫内の床や壁を金属で覆って乱反射させることで食品をムラなく効率的に温めることが可能です。
製品の乾燥や殺菌などにも応用されており、産業界において重要が高まっています。
レーダー
レーダーは、対象物に電波を発射して反射波を捉えることで、目標物までの距離や方位を正確に測定します。
マイクロ波をレーダーに用いると、その性質から目標物まで正確に発射でき、元の位置に返ってくるのが特徴です。
船舶用や航空機管制、気象観測など幅広い分野で活躍しています。
波長を調整することで、天候や対象物の大きさの違いなど、さまざまな状況に対応可能です。
波長が10cmの場合は悪天候時に利用しやすく、3cmほどの波長であれば小さな目標物の探知性能が高くなるなど、波長によって異なる役割を果たします。
船舶用レーダーでは、波長の異なるレーダーが採用され、目的に合わせて使い分けられています。
中継回線
マイクロ波の直進性の高さを活用した事例の1つが中継回線です。
中継回線とは、2つの拠点間での電気通信を接続するための中継を行う回線を指します。
複数の中継点を経由させることで遠い場所にまで伝送が可能です。
中継回線は、主にテレビ中継や市外電話の伝送、衛星通信などで活用されています。
マイクロ波通信による中継はケーブルが不要であり、短い工期でルートを設置できるため経済的です。
中継所に機能が集約されていることから自然災害にも強く、日本に適した技術といえます。
マイクロ波の製造プロセスでの活用例

マイクロ波は、製造業においてもさまざまな業種で活用されている技術です。
実際に製造業で活用される具体的な事例を以下にまとめました。
- 精油・芳香蒸留水の抽出
- 食品の殺菌
- 食品や医薬品、セラミックスなどの乾燥
- ガラスやフィルム、樹脂などへのプラズマ処理
マイクロ波が製造プロセスで活用される事例を紹介します。
精油・芳香蒸留水の抽出
植物原料から精油や芳香蒸留水を抽出する際にマイクロ波加熱が使われています。
植物を加熱して気化した成分を冷却すれば精油や芳香蒸留水の抽出が可能です。
ただし、通常の環境では沸点が高くなるため、抽出の過程でデリケートな成分が破壊される可能性があります。
マイクロ波を利用すれば、減圧下で加熱ができるため、低い温度で抽出することで成分を壊すことなく精油・芳香蒸留水を得られるのが特徴です。
柑橘類など熱に弱い植物を原材料として使いたい場合に適しています。
食品の殺菌
マイクロ波を照射することで、カビや酵母、大腸菌群などを殺菌して食品の安全を守ることもできます。
食品の表面や内部が均一に処理され、見た目も風味もほとんど変わりません。
容器や包装を通して照射することで、食品そのものの加熱が可能であり、手間がかからないのも特徴の1つです。
さまざまなメリットがあるため、食品業界では菓子類やレトルト食品など幅広い食品に使われています。
食品の安全性を高めることができ、効率性が高くて、経済的なため、重宝されている技術です。
食品や医薬品、セラミックスなどの乾燥
マイクロ波を利用した乾燥技術は、さまざまな業界で採用されています。
従来の方法では、乾燥が完了するまで時間がかかり、コストも高くなってしまいました。
含水率が低い部分で乾燥の速度が落ちてしまう点も問題だったのです。
しかし、マイクロ波を活用した乾燥方法は、急速に発熱させることができ、乾燥時間の短縮も可能になります。
また、マイクロ波による加熱は品質が均一になる点や微生物を抑制する点、加熱を調整して食感などをコントロールできる点などもメリットです。
さらに油脂含量の高い生地の乾燥も可能なため、応用範囲の広い技術として注目されています。
ガラスやフィルム、樹脂などへのプラズマ処理
マイクロ波によって、ガラスやフィルム、樹脂などへのプラズマ処理が行えます。
プラズマとは物質の第4の状態であり、プラズマ処理を施すことで基材基盤に新たな機能を与えることが可能です。
例えば、防汚性や撥水性を加える、コーティングを施す、抗菌性を持たせるなど幅広い機能や特性を付加できます。
マイクロ波を使えば、通常の数千倍もの密度を持った高密度プラズマの生成が可能です。
高密度プラズマは、通常のプラズマよりも短時間で表面処理が可能であり、生産性が向上するなどメリットがあります。
マイクロ波を利用したプラズマ処理は、幅広い分野で活躍している技術です。
まとめ

マイクロ波は他の電磁波にはない性質によって、多くの分野で重要な役割を果たしています。
例えば、レーダーや中継回線などに利用されており、我々の生活に密着した技術といえるでしょう。
他には、製品の殺菌や乾燥、プラズマ処理、精油の抽出などで利用されています。
既存の製品開発における効率性やコスト、品質などの問題を解決できる可能性がある技術なのです。
蒸留でデリケートな成分を抽出することが困難で悩んでいるならば、マイクロ波抽出装置をおすすめします。
減圧下で低温抽出ができるため、デリケートな成分を壊さずに取り出すことが可能です。
マイクロ波抽出装置のことは、兼松エンジニアリング株式会社までお気軽にお問い合わせください。
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