
焼酎の風味は蒸留方法によって大きく変わります。
特に影響を与えるのが、「常圧蒸留」と「減圧蒸留」という2つの方法です。
さらに、最近では「マイクロ波抽出」などの新しい技術も注目されています。
本記事では、焼酎の蒸留方法について詳しく解説し、どのような蒸留方法がどの焼酎に適しているのか、選び方のポイントを紹介します。
焼酎の「蒸留」とは?

蒸留とは、アルコールを含む液体を加熱し、その蒸気を集めて冷却することです。
そのため、風味が残ったままのアルコールを製造できます。
焼酎の製造では、もろみを蒸留することでアルコール度数を高め、不純物を取り除きながら原料の風味を活かした酒をつくります。
焼酎における蒸留の役割は、酒質を決定する重要な工程の1つです。
蒸留方法によって、焼酎の香りや味わいに大きな違いが生まれます。
例えば、高温で蒸留する「常圧蒸留」は、原料の豊かな風味を引き出し、濃厚な味わいに仕上がるのが特徴です。
一方で、「減圧蒸留」は低温で蒸留するため、雑味が少なく、すっきりとした味わいになります。
蒸留方法の選択が、焼酎の個性を大きく左右します。
焼酎の蒸留方法 | 2つの基本タイプ

焼酎の蒸留方法は、大きく分けて「単式蒸留(本格焼酎)」と「連続式蒸留(甲類焼酎)」の2種類です。
それぞれの蒸留方法には特徴があり、焼酎の味わいにも大きな違いがあります。
ここでは、それぞれの蒸留方法について詳しく解説します。
単式蒸留(本格焼酎)
単式蒸留は、一度だけ蒸留を行うシンプルな方法で、本格焼酎(乙類焼酎)の製造に用いられます。
蒸留工程を1回しか行わないため、原料の風味や個性がそのまま残りやすいのが特徴です。
例えば、芋焼酎ではさつまいもの甘みや香ばしさが強調されます。
また、麦焼酎や米焼酎、黒糖焼酎なども単式蒸留を採用しており、それぞれの原料の特徴をしっかりと感じられる仕上がりになります。
一般的にコクが出て、奥深い味わいを楽しめるのが、単式蒸留でつくった焼酎です。
連続式蒸留(甲類焼酎)
連続式蒸留は複数の蒸留器を連続的に使用し、高純度のアルコールを効率的に抽出する方法です。
この方法でつくられる焼酎は、クセがなくクリアな味わいが特徴で、甲類焼酎の製造に適しています。
甲類焼酎は、一般的にチューハイやサワーのベースとして使用されることが多く、飲みやすさを重視した焼酎です。
また長期間の熟成を経ても、香りや味が大きく変化しにくいという特性があります。
蒸留工程で不純物を取り除くことで、爽やかでスムーズな飲み口の焼酎が完成します。
常圧蒸留と減圧蒸留

本格焼酎の蒸留方法は、「常圧蒸留」と「減圧蒸留」の2種類です。
これらの蒸留方法の違いによって、焼酎の香りや味わいが大きく異なります。
ここでは、それぞれの蒸留方法の特徴と、それに適した焼酎の種類について解説します。
常圧蒸留
常圧蒸留は、大気圧下で行う伝統的な蒸留方法です。
通常の気圧で蒸留するため、もろみの温度は85~95℃と比較的高温になり、原料の風味が豊かに残ります。
この方法でつくられる焼酎は、濃厚でコクのある味わいが特徴です。
特に、芋焼酎や麦焼酎に用いられることが多く、熟成させることでさらに深みが増します。
例えば、鹿児島の芋焼酎の多くは常圧蒸留を採用しており、芳醇な香りと甘みを引き出しています。
減圧蒸留
減圧蒸留は、蒸留器内の気圧を下げ、低温による蒸留を行う方法です。
気圧が低いため、もろみの沸点は45~55℃となり、軽やかでクリアな味わいに仕上がります。
この方法でつくられる焼酎は雑味が少なく、すっきりとした飲み口が特徴です。
米焼酎や麦焼酎の一部、そして初心者向けの芋焼酎などに採用されています。
例えば、「木挽BLUE」などの銘柄は減圧蒸留によって仕上げられ、爽やかな口当たりが楽しめます。
マイクロ波抽出(マイクロ波減圧蒸留)

近年、焼酎業界では新しい蒸留技術として「マイクロ波抽出(マイクロ波減圧蒸留)」が注目されています。
この技術は、マイクロ波を利用して低温で効率的に蒸留を行う方法であり、酒粕からの粕取り焼酎の製造や、果皮からの精油・芳香成分の抽出にも応用されています。
従来の蒸留方法と異なり、熱の影響を抑えながら、より繊細な香味成分を抽出できる点が特徴です。
マイクロ波抽出(マイクロ波減圧蒸留)とは
マイクロ波抽出はマイクロ波を照射することで、もろみや酒粕などの内部から直接加熱し、蒸留を行う技術です。
通常の減圧蒸留と組み合わせることで、さらに低温での蒸留が可能になり、熱による成分の変質を抑えられます。
これにより、従来の蒸留方法では難しかった高品質な香味成分の抽出が可能です。
メリット
マイクロ波抽出には、従来の蒸留技術にはない4のメリットがあります。
- 高品質な香味成分の抽出
- 効率的な抽出
- 省エネルギー
- 多様な原料への応用
では、それぞれ詳しく説明していきましょう。
1つめのメリットは、マイクロ波を利用すると低温での蒸留が可能なため、熱に弱い香味成分を損なうことなく抽出できることです。
そのため、高品質な香味成分の抽出が可能になります。
また、従来の蒸留方法に比べて短時間で成分を抽出でき、生産効率の向上が期待できます。
従来の加熱方法よりも少ないエネルギーで効率的に加熱できるのもメリットの1つです。
この蒸留方法は、酒粕だけでなく、果実や樹木など、さまざまな原料から香味成分を抽出する用途にも応用できます。
デメリット
一方で、マイクロ波抽出には以下のようなデメリットもあります。
- 導入コストが高い
- 技術的な知識が必要
- 規模の制約
それぞれ詳しく見ていきましょう。
マイクロ波減圧抽出は比較的新しい技術であるため、専用の設備を導入するために初期投資が必要になるのが、デメリットの1つです。
また、従来の蒸留技術とは異なるため、効果的な運用にはマイクロ波加熱に関する専門知識が求められます。
現在の技術では、小規模な生産に適しているものの、大量生産には向いていないためさらなる研究開発が必要です。
参考:http://kanematsu-mwextract.jp/
焼酎の蒸留に関するQ&A

焼酎の蒸留方法については、さまざまな疑問を持つ人が多くいます。
ここでは、蒸留器の違いやブレンド焼酎、樽貯蔵焼酎との関係など、よくある質問を紹介します。
Q:蒸留器によって味は変わる?
蒸留器の種類によって、焼酎の味わいは大きく異なります。
単式蒸留器は、原料の風味を活かした本格焼酎をつくるのに適している方法です。
他方、連続式蒸留器は不純物を取り除き、すっきりとした味わいの甲類焼酎を製造するのに使用されます。
また、蒸留時の圧力によっても違いが生じます。
常圧蒸留では、コクのある味わいになるのが特徴です。
減圧蒸留では、すっきりとした飲み口に仕上がります。
このように、蒸留器の選択は焼酎の個性を決める重要な要素です。
Q:ブレンド焼酎とは?
ブレンド焼酎とは、異なる種類の原酒を組み合わせてつくられた焼酎です。
例えば、麦焼酎の異なる製法の原酒をブレンドすることで、よりバランスの取れた風味を実現できます。
ブレンドを担当する「ブレンダー」と呼ばれる専門家が、それぞれの原酒の特性を活かしながら最適な組み合わせを見極めます。
焼酎の香りや味わいの幅を広げ、より多様なニーズに応えるための重要な工程です。
Q:樽貯蔵焼酎と蒸留方法の関係は?
樽貯蔵焼酎は、蒸留後に樽で熟成させる焼酎です。
蒸留方法と樽貯蔵を組み合わせることで、独特の風味が生まれます。
例えば、常圧蒸留でつくられた麦焼酎を樽で寝かせると、より複雑な香りと深いコクが加わります。
一方、減圧蒸留の焼酎を樽貯蔵する方法では、軽やかな飲み口に加えて樽由来のバニラ香を引き立たせることが可能です。
樽の種類や使用年数によっても味わいが変わるため、ブレンダーの技術が重要になります。
まとめ

焼酎の蒸留方法には、単式蒸留と連続式蒸留の2種類があり、本格焼酎と甲類焼酎の特徴を決定づけています。
また、常圧蒸留と減圧蒸留の違いによって、焼酎の風味や飲み口が大きく変わる点も特徴です。
さらに、最新の技術であるマイクロ波抽出は、効率的に香味成分を抽出できる可能性を秘めています。
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