
近年、マイクロ波抽出技術は、その高効率かつ環境に優しい特性から、食品・化粧品・医薬品など、さまざまな産業分野で注目されています。
従来の抽出方法と比べ、短時間で高品質な成分を抽出できるだけでなく、熱に弱い成分を保護するため、製品の品質向上にも役立つ技術なのです。
本記事では、マイクロ波の基本原理の説明や産業分野での活用事例について詳しく紹介していきます。
マイクロ波とは? その定義と基本原理

マイクロ波とは、波長が1mm〜1m(周波数300MHz〜300GHz)の電磁波の一種です。
電磁波の中でも、赤外線と電波の間に位置し、高い周波数帯を持つことが特徴です。
その性質を利用し、通信・レーダー・加熱・センシングといった多様な用途で活用されています。
基本原理として、マイクロ波は物質内の分子を振動・回転させることでエネルギーを伝達します。
例えば、電子レンジではマイクロ波が水分子を振動させ、その摩擦熱によって食品を加熱しているのです。
また、通信技術では、マイクロ波の直進性と高周波特性を利用し、衛星通信や携帯電話、Wi-Fiといった分野で重要な役割を果たしています。
近年では、食品・化粧品・医薬品の分野でマイクロ波による抽出技術が注目されています。
従来の溶媒抽出と比較しても高効率かつ環境負荷が低く、今後さらに技術が発展すれば、より幅広い分野での応用が期待されている手法です。
マイクロ波の特徴と産業での活用

マイクロ波は、従来の加熱や蒸留技術とは異なり、物質の内部から直接エネルギーを作用させる特性を持ちます。
この特性により、エネルギーの伝達効率が高く、加熱プロセスの時間短縮や成分の抽出効率の向上が期待できます。
産業での活用例
- 食品業界:天然香料の抽出、スパイスやハーブの成分濃縮
- 医薬品業界:植物由来の有効成分の抽出、低温乾燥技術
- 化粧品業界:オーガニック成分の抽出、ナチュラル化粧品の製造
特に、食品・医薬品・化粧品業界では、マイクロ波技術の活用が進んでおり、高品質な製品の製造に貢献しています。
マイクロ波技術の主な特徴
マイクロ波は、分子レベルでエネルギーを供給できるため、従来の蒸留法と比較して抽出時間を大幅に短縮できます。
これにより、製造コストの削減や生産性の向上が可能になります。
また、従来の加熱法では、高温によって香りや有効成分が失われることがありました。
しかし、マイクロ波は選択的に加熱が可能なため、低温処理でも十分な抽出効果を得られ、品質の維持がしやすいのが特徴です。
化学溶媒を使用せずに成分を取り出せるため、環境に優しいプロセスとされています。
エネルギー効率が高く、省エネルギーで持続可能な製造方法としても注目されています。
ミリ波とマイクロ波の違いとは?

マイクロ波とミリ波はどちらも電磁波の一種ですが、その周波数帯や用途に違いがあります。
一般的に、マイクロ波は300MHz(0.3GHz)〜300GHzの範囲にあり、その中でも30GHz以上の高周波帯を「ミリ波」と呼びます。
特性 | マイクロ波 | ミリ波 |
周波数帯 | 300MHz〜300GHz | 30GHz〜300GHz |
波長 | 1m〜1mm | 10mm〜1mm |
直進性 | 高いが、ミリ波よりは回折しやすい | 非常に高く、障害物に弱い |
浸透性 | 物質内部まで浸透しやすい | ほとんど浸透せず、表面で反射・吸収される |
主な用途 | 無線通信、レーダー、 電子レンジ、加熱・抽出技術 | 5G通信、自動車レーダー、 精密センシング |
ミリ波は、周波数が高いため直進性が強く、障害物の影響を受けやすい反面、データ通信の高速化に優れているのが特徴です。
この特性を活かし、5G(第5世代移動通信システム)や自動運転車のレーダー、高精度な即位・センシング技術に活用されています。
マイクロ波抽出装置とは?

マイクロ波抽出装置とは、マイクロ波のエネルギーを利用して、植物由来の成分や精油を効率的に抽出する装置です。
従来の水蒸気蒸留法と比べて、短時間で高品質な成分を抽出できるため、食品・化粧品・医薬品業界を中心に注目されています。
マイクロ波抽出の仕組み
マイクロ波は、物質内部の水分子を振動させることで熱を発生させます。
この特性を利用し、溶媒を使わずに目的の成分を抽出することが可能です。
従来の蒸留法では熱源を用いた加熱が必要でしたが、マイクロ波抽出では直接分子に作用するため、効率的に成分を回収できます。
マイクロ波抽出のメリット
マイクロ波抽出には、次のようなメリットがありますので説明していきましょう。
低温の作業ため、熱に弱い成分(香り成分・抗酸化物質など)を劣化させることなく品質を保持したまま抽出することが可能です。
従来の水蒸気蒸留法に比べ、50%以上も抽出時間が短縮できます。
また、ボイラーが不要なため、エネルギーコストやメンテナンス費用を抑えられるのです。
オール電化によるCO2排出削減、化学溶媒を使用しないクリーンな製造も可能で、環境負荷が少ない抽出方法です。
このようにマイクロ波抽出は、高品質な成分を短時間かつ低コストで抽出できるため、持続可能な製造プロセスとして、さまざまな業界で活用が進んでいます。
マイクロ波抽出装置の産業分野での活用

マイクロ波抽出装置は、さまざまな産業分野で効率的かつ高品質な成分抽出を実現しています。
特に、食品・飲料業界、化粧品・医薬品業界、環境・バイオ分野において、その独自のメリットを活かした活用が進んでいます。
以下は、各分野での主な活用事例です。
食品・飲料業界
用途:果物やハーブからの精油抽出、香料・フレーバーの回収
マイクロ波抽出技術は、低温で成分を抽出できるため、風味や栄養成分を損なわずに高品質な成分を得ることが可能です。
特に、香料やフレーバーを効率的に回収することができ、製品の品質を保ちながらコスト削減を実現しています。
化粧品・医薬品業界
用途:ローズウォーターやカモミールエキスなど、天然由来の美容成分を抽出
化学溶媒を使用せず、天然由来の成分を純度高く抽出できるため、クリーンな製造が可能です。
これにより、より安全で高品質な製品を提供することができます。
環境・バイオ分野
用途:廃棄食品や植物残渣からの有用成分抽出
マイクロ波抽出装置は、廃棄物から有用成分を効率的に回収できるため、資源の有効活用に貢献します。
また、バイオ燃料の生成にも応用されており、環境に優しい製造方法として注目されています。
参考:http://kanematsu-mwextract.jp/
マイクロ波抽出技術を導入するメリット

マイクロ波抽出技術の導入により、製品の品質向上、環境への配慮、コスト削減が実現できます。
この技術の特徴的な利点を詳しく見ていきましょう。
マイクロ波抽出は、低温での処理が可能であり、熱に弱い成分を劣化させることなく抽出できます。
これにより、香りや栄養成分を保ちながら、純度の高い製品をつくることが可能です。
特に食品や化粧品では、天然由来の成分の保持が重要であり、マイクロ波によってその品質が大きく向上します。
省エネ・環境対応にも適しているのが、マイクロ波抽出技術です。
この技術では、従来のボイラーシステムを必要としないため、エネルギー効率が大幅に向上します。
これにより、CO₂排出量の削減が実現でき、環境への負荷を軽減することができます。
再生可能エネルギーと組み合わせることで、よりサステナブルな製造プロセスを構築することも可能です。
コスト削減を可能にするのも、メリットの1つでしょう。
マイクロ波抽出は、ボイラーや大量の熱源を必要とせず、運用コストを大幅に削減できるからです。
加えて、短時間での抽出が可能で、エネルギーコストを最小限に抑えつつ、高い生産性を確保できます。
これにより、長期的なコスト削減が期待でき、企業の収益性向上に寄与します。
まとめ:マイクロ波抽出技術の導入を検討しませんか?

いかがでしたでしょうか?
この記事では、マイクロ波とは何か基本原理を説明し、産業分野での活用事例について詳しく紹介してきました。
マイクロ波抽出装置は、効率的で高品質な抽出プロセスを提供するため、多くの業界で革新的な解決策を提供しています。
短時間での処理、熱ダメージを抑えた成分抽出、環境負荷の軽減といったメリットを享受できることから、今後さらに多くの企業で導入が進むと期待されます。
もし、マイクロ波抽出装置の導入に興味がある場合は、兼松エンジニアリング株式会社にぜひお問い合わせください。
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