分留と蒸留の違いとは?仕組みや目的、活用例を紹介

混合物から特定の物質を精製したい場合に用いられる方法が蒸留です。

物質の精製方法には分留もあり、似た部分の多い操作のため違いが分からない方がいるかもしれません。

本記事では分留と蒸留について、仕組みや目的の違いや具体的な活用例を紹介します。

分留と蒸留の仕組みの違い

以下では分留と蒸留の仕組みの違いについて解説します。

沸騰した液体から生じた気体を冷やして液体に戻すのが蒸留

不純物を取り除けるため、化学工業や医薬品製造などの幅広い分野で採用されています。

また、圧力を加える、アルコールを混ぜる、真空にするなど設定を変えて行うことも可能です。

操作の条件を変えることで、特定の成分のみの回収を実現できます。

蒸留の方法は研究開発が進められていて、特殊な条件下を設定できる装置が登場しており、さらに用途が広がっています。

沸点の差を利用して液体の混合物を成分ごとに分けるのが分留

分留は石油製品を作る際に用いられる技術として有名です。

石油を分留しガソリンや灯油、軽油、ナフサなどを得られます。

さらにナフサを分留すれば、ベンゼンやトルエン、キシレンなどを取り出すことが可能です。

精製された石油成分は自動車の燃料や化学製品の原料になります。

多くの化学反応を起こす必要があるため、装置の規模が大きく、コストがかかるのが特徴です。

分留は蒸留の手法の一種

取り出したい物質の種類など目的に合わせて最適な手法を選ぶことが重要です。

分留は石油化学製品の精製に主に用いられ、エッセンシャルオイルの精製には減圧蒸留がよく用いられるなど、それぞれの手法ごとに適した手法は異なります。

蒸留の種類

主な蒸留の種類を以下にまとめました。

蒸留の種類精製できるもの
単蒸留アルコール飲料
分留石油製品
減圧蒸留エッセンシャルオイル、フレーバー
分子蒸留薬物の純化、有機合成物の乾燥など
水蒸気蒸留精油

基本的な蒸留手法は単蒸留と呼ばれます。

特殊な条件を活用する手法では専用の装置が必要になります。

何を精製したいか目的に合わせて適切な手法を選ぶことが重要です。

分留と蒸留の目的の違い

分留と蒸留は行う目的が異なっています。

目的にどのような違いがあるのか紹介します。

分留の目的はさまざまな物質が混ざった混合物を分離すること

蒸留の操作を次々と実行して、目当ての物質を得ます。

例えば、石油を分留すれば石油ガスやガソリン、灯油、軽油など有用な成分の精製が可能です。

ただし、特定の一つの成分のみを取り出したい場合には適していません。

蒸留の目的は純度の高い物質を得ること

例えば、医薬品の製造工程で特定の溶媒を回収したい場合などに行われます。

溶媒や残渣の回収を目的として実施されるなど、工業的な用途で特に有用です。

ただし、組成の複雑な物質や沸点が近い物質から目当ての成分を取り出すには、より複雑な工程を経なければいけません。

分留や蒸留の活用例

分留や蒸留は産業界の多くの分野で重宝されています。

実際にどのような場面で活躍しているのか知りたい方のために、具体的な事例を紹介します。

分留により石油からガソリンを精製する

製油所では原油から石油製品を精製する操作が行われており、大規模な設備が必要です。

製油所には50mもの高さの設備があり、その中で原油が加熱されて各成分が精製されます。

分留によって得られたガソリンは、車の燃料や石油化学製品の原料となります。

他に灯油や軽油なども精製されるため、分留は石油製品を得るために重要な手法といえるでしょう。

原料を発酵させて蒸留して蒸留酒を得る

アルコールと水で構成される醸造酒を加熱させると水より沸点の低いアルコールの蒸気を取り出せます。それを液体に戻すことで出来るアルコール度数の高いお酒が蒸留酒です。

蒸留酒には代表例として焼酎やウイスキー、ブランデーなどがあります。

アルコール度数が高いために腐りにくく、開封した後も長期間楽しめるのが特徴です。

蒸留により排水から有機成分を回収する

排水を蒸留し有機成分を取り戻す手法が注目されています。

有機溶剤を取り戻せば資源のリサイクルができて、廃棄物を減らすことにもつながり、環境に配慮した企業活動の実現が可能です。

活性汚泥法と呼ばれる、微生物の働きを利用して工場排水を処理する方法では設備コストや運転コストが高額になります。

蒸留を利用すれば有機成分を収集できるだけではなく、そのまま放流できるため、排水処理にかかるコストの削減もできるのがメリットです。

植物を蒸留して精油を取り出す

ハーブなどの植物から精油を得るための方法としてよく採用されるのが蒸留です。

人気が高いのはローズマリーやラベンダー、カモミールなどのハーブから得られた精油です。

また、果物や野菜などから香り成分を取り出して商品化するケースもあります。

規格外の野菜や果物をリサイクルする事例もあり、蒸留は環境に優しい技術として注目を集めています。

規格外の農作物は食品ロスの要因の一つです。に規格外の農作物が増えると企業や生産者に経済的な負担がかかります。

規格外品の利活用を実現すれば、環境に配慮した企業活動ができ、ブランディング面でも役立ちます。

分留や蒸留を行う方法

分留や蒸留をビジネスに活用したいならば、具体的な方法を知ることが大切です。

ここでは一般的な装置の特徴や、近年注目を集めるマイクロ波抽出装置について詳しく解説します。

蒸留を行うための装置がある

工場内で蒸留を行うためには専用の装置を導入しなければいけません。

導入を検討する際にはメーカーに相談し、用途や予算に合わせた最適な装置の提案を受けることをおすすめします。

最先端の技術が採用されたものは初期費用が高くなるものの、効率化やランニングコスト削減、環境負荷低減などの点でメリットがあります。

分留は複雑な作業であり高いコストがかかる

沸点の低いものから順番に沸騰させて分離していくための装置は分留塔と呼ばれ、石油精製のように大規模で複雑な操作を行う場合は、高さが約50mにも達します。

分留には複雑な工程が含まれており、他の方法と比較すると必要なエネルギーも大きく、完了するまでにかかる時間も長いのが一般的です。

そのため、石油精製は石油プラントなどの大規模な施設を用意して、多くの費用とエネルギーを消費して行われます。

分留は化学薬品やアルコール飲料の製造など、高純度の分離には必要不可欠な操作です。

水蒸気蒸留はシンプルな仕組みでコストが安い

混合物から沸点が大きく異なる成分を取り出すのに適しています。

加熱して蒸気を発生させ、それを凝縮して液体に戻すという単純な操作であるため、装置のセットアップも簡単です。

それほど純度が要求されない用途で小規模・実験室レベルで行う場合に適しています。

ただし、細かな操作はできず、組成が複雑なものや沸点の近い混合物の精製には不向きです。

より精度の高い精製を行いたい場合はマイクロ波抽出装置の利用をおすすめします。

デリケートな成分を扱いたいならマイクロ波抽出装置を利用する

高い温度で行う手法は、熱に弱いデリケートな成分の精製には適していません。

デリケートな成分の精製をしたいならば、マイクロ波抽出装置をおすすめします。

マイクロ波抽出装置は溶媒や水を必要としないため、水分を含んだ大量の残渣が生じることはありません。

精油やハーブウォーターなどを精製したい場合に適した方法です。

例えば、果物の加工を行うメーカーが、残渣として発生した搾りかすをリサイクルするのにマイクロ波抽出装置を活用した事例があります。

マイクロ波抽出装置はコスト削減や環境への配慮、業務効率化、新しいビジネスの開拓などを実現できる技術です。

参考:http://kanematsu-mwextract.jp/

マイクロ波抽出のことは兼松エンジニアリングにお問い合わせを

蒸留は沸点の違いを活用して特定の物質の精製を行う技術の総称です。

分留は連続的に蒸留を行って、個々の成分に分けていく手法を指します。

分留や蒸留は目的が異なっているため、何を抽出したいかによって適切な方法を選ぶことが重要です。

熱に弱い柑橘類から香り成分を含んだハーブウォーターを抽出する用途であれば、マイクロ波抽出装置をおすすめします。

マイクロ波抽出装置の導入に興味のある方はぜひ兼松エンジニアリング株式会社までお問い合わせください。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です