
電子レンジや通信機器に利用されているものに、マイクロ波があります。
マイクロ波は、電磁波のひとつです。
しかし、発生原理について詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
ここでは、マイクロ波の発生原理について解説します。
マイクロ波の特質および人体への影響、またマイクロ波を利用するメリットも紹介します。
マイクロ波を活用している事例もあわせて解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
マイクロ波の発生原理

マイクロ波は、電磁波のひとつですが、どのような原理で発生しているのか、またマイクロ波の特質について解説します。
マイクロ波が人体に影響を及ぼすのかどうかについてもあわせて紹介していきます。
マイクロ波とは
マイクロ波は、波長が1mm~1m、周波数(1秒間に繰り返す波の数)が、300MHzから300GHzの電磁波です。
マイクロ波を発生させるためには、主にマグネトロンとクライストロンの二つの方法があります。
マグネトロンは、磁石による磁界を加えた特殊な二極真空管です。
電子が電界と磁界の影響を受けて特定の軌道を描きながら回転し、その運動エネルギーが、共振空洞内でマイクロ波として放出されます。
クライストロンは、電子ビームを用いてマイクロ波を増幅する電子管です。
陰極から放出された電子は陽極で加速され、入力空洞に導入されたマイクロ波の位相により速度変調を受けます。
この変調により電子が集束し、出力空洞を通過する際に強力な交流電界を誘起し、大電力のマイクロ波を生成します。
マイクロ波の特質
特質として、どのようなものがあるのかについて、以下で紹介します。
マイクロ波の特質は以下の通りです。
- 直進性の高さ
- 広い周波数帯域
- エネルギーの伝達能力
マイクロ波の特質の一つに 直進性の高さがあります。
波長が短いため、光のように特定の方向へ指向性をもって進めます。
レーダーや衛星通信に適しているのは、そのためです。
広い周波数帯域を利用できる点も、マイクロ波の特質です。
一度に大量の情報を高速で伝送できるため、無線通信や5G技術などで重要な役割を果たしています。
さらに、マイクロ波は、物質内部にまでエネルギーを伝達することが可能です。
主に水分子を振動させ、その摩擦熱で物質を加熱させます。
電子レンジは、マイクロ波の原理を利用して加熱などを行っています。
マイクロ波の人体への影響
マイクロ波を使った機器、例えば電子レンジや通信機器などは日常生活でも利用します。
マイクロ波は電磁波の一種であるため、人体への影響を心配する人もいるかもしれません。
高出力のマイクロ波に長時間さらされると、生体組織に熱影響を与える可能性があります。
そのため、人体への影響についても注意が必要です。
特に水分を多く含む組織は影響を受けやすく、加熱によるやけどのリスクがあります。
しかし、日常的に使用される電子レンジやWi-Fiなどのマイクロ波は、適切に設計されているため、通常の環境下では健康への悪影響はほとんどないとされています。
マイクロ波を利用するメリット

マイクロ波を利用する長所として、以下のものがあります。
- 加熱効率がよい
- 加熱が高速
- 特定の素材や成分に反応
それぞれ解説していきましょう。
加熱効率がよい
食品加工や工業用途において、マイクロ波は高い加熱効率を発揮します。
物質内部に働きかけ、分子振動を直接引き起こします。
かつての加熱方法では、外部から熱を伝導させなければなりませんでした。
マイクロ波の場合、エネルギーを直接内部に伝えるため、熱伝導に頼ることなく短時間での加熱が可能です。
加熱が高速
電磁波の特質を利用して物質内部で直接熱を発生させるため、マイクロ波では急速な温度上昇が可能です。
火や熱風を用いる加熱方式と比べ、数倍以上の速さで加熱が完了することが多いです。
特に食品加工や工業用途で効果を発揮します。
短時間での加熱が可能なため、生産ラインの連続加熱工程に適しており、製造効率が上がり、省エネ化も図れます。
特定の素材や成分に反応
誘電特質の違いを利用することで、特定の素材や成分に反応できるのが、マイクロ波の利点です。
水分を多く含む物質は、マイクロ波を吸収しやすく、急速に温度が上昇します。
一方で、金属や一部のプラスチックはほとんど影響を受けません。
この特質を活かし、必要な部分だけを効率的に反応させることが可能です。
加熱など、反応が不要な部分への影響を最小限に抑えられるため、エネルギー効率が向上し、品質管理が容易です。
樹脂と金属の複合部品では、樹脂のみの加熱・接着が可能なため、マイクロ波は複合材料の加工にも適しているといえるでしょう。
マイクロ波を利用した活用事例

マイクロ波を利用した活用事例を、ここでは紹介します。
主な事例として、以下のものがあるので、それぞれ解説します。
- 電子レンジ
- 通信分野
- 抽出装置
電子レンジ
電子レンジは、2.45GHzのマイクロ波を利用して食品を加熱する家電製品です。
マイクロ波が食品内部に浸透し、水分子を振動させることで摩擦熱を発生させます。
発生した摩擦熱により、短時間で効率的に温められ、火や熱風を用いずに調理できます。
マイクロ波は食品内部まで直接働きかけるため、全体を均一に加熱できるのが特徴です。
加熱ムラが発生しやすい直火やオーブンと違い、電子レンジなら内部からも加熱されるため、効率的な調理が可能です。
通信分野
マイクロ波は、高い周波数帯域をもつため、大容量のデータを高速で伝送することが可能です。
そのため、衛星通信や携帯電話の無線通信技術に活用されています。
また、マイクロ波は 直進性が高く、特定の方向に電波を送信しやすい ため、レーダーや衛星通信での精密な情報伝達に適しています。
パラボラアンテナを用いることで、通信の安定性が向上し、目的の通信機器へ効率よく電波を届けることが可能です。
抽出装置
マイクロ波を利用した抽出装置は、これまでの抽出方法よりも短時間で高効率に有効成分を抽出できます。
マイクロ波は物質内部までエネルギーを浸透させ、分子の振動を活性化することで、抽出時間を大幅に短縮しながら高収率を実現しているのです。
また、マイクロ波抽出は低温での処理が可能で、熱に弱い成分の劣化を防ぎながら、有効成分を保持したまま抽出できるのが特徴です。
これにより、医薬品や食品分野において、品質を維持したままの成分回収が可能となります。
兼松エンジニアリング株式会社のマイクロ波抽出装置はさまざまな用途に利用が可能

(引用:兼松エンジニアリング株式会社 )
兼松エンジニアリング株式会社のマイクロ波抽出装置は、高品質な精油や芳香蒸留水の抽出に優れた性能を発揮します。
今までの加熱式抽出では、揮発しやすい香り成分が失われることがありました。
しかし、兼松エンジニアリング株式会社の抽出装置は、マイクロ波を利用することで、低温での抽出が可能です。
そのため、熱に弱い成分も劣化させずに高品質な精油が得られるのです。
加えて、ボイラー式水蒸気蒸留装置と比較して、ランニングコストを半分以下に抑えられます。
エネルギー消費を削減しながらの生産が可能であり、精油・食品・医薬品など幅広い分野での活用が期待できます。
まとめ

マイクロ波の発生原理について解説しました。
マイクロ波は電磁波のひとつです。
直進性の高さや、広い周波数域、物質内部までエネルギーの伝導が可能な点が、マイクロ波の特質です。
その特質を利用して、通信衛星や電子レンジ、抽出装置などに利用されています。
兼松エンジニアリングのマイクロ波抽出装置は、高品質な精油や芳香蒸留水の抽出が可能です。
経験豊富な専門知識を持つスタッフが、お客様のニーズにお応えします。
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