
日本では毎年、規格外野菜として大量の野菜が市場に出回らず廃棄されています。
これは形や大きさ、色などが基準を満たさないために発生するもので、品質には問題がないにもかかわらず多くの野菜が捨てられてしまっているのです。
本記事では、廃棄野菜がもたらす環境やコストの問題、そして活用法と最新技術について解説します。
廃棄野菜の現状

日本において、なぜ大量の野菜が廃棄されているのでしょうか。
廃棄野菜の現状とその背景について見ていきましょう。
規格外野菜とは
廃棄される野菜の多くは規格外野菜といわれるものです。
規格外野菜とは、市場で定められた規格に外れた野菜のことで、形が歪んでいたり、大きさが不揃いだったり、色むらや傷がある野菜のことを指します。市場では、野菜を効率よく流通させるため、サイズや形、色、品質などに細かい基準が設定されています。
これらの野菜は、味や栄養価に問題がないにもかかわらず、多くが市場に出回ることなく廃棄されているのです。
日本の廃棄野菜の廃棄量
廃棄されている野菜がどれほどあるのかについて、正確な数字が発表されている統計等はありません。
ただし、農林水産省のデータによれば、2022年の野菜の収穫量は1,284万トンに対して出荷されたのは1,113万トンに留まっています。
つまり、規格外品などで市場に流通しなかった野菜が約170万トン、収穫量の約13%もあるということです。
しかも、このデータは収穫量として報告された数字から出しているため、収穫もされず畑でそのまま廃棄された野菜は含まれていません。
トータルでは生産された30%近い野菜が廃棄されているのではないかとも推測されています。
なぜ廃棄野菜が発生するのか
廃棄野菜が生まれる理由は主に「見た目の基準」によります。
消費者が見た目の良いものを求めると考えて、流通業者やスーパーは形やサイズ、色合いなどを厳しく選別します。
この基準に合わない野菜は「規格外」とされ、食用に適していても廃棄されることが多いのです。
さらに、過剰生産による価格の下落を防ぐために出荷量を調整していることや、流通にかかるコストを抑えるために形や大きさを揃えていることも、規格外野菜の発生を増加させる要因となっています。
廃棄野菜の主な問題点

廃棄野菜が発生することで、生産にかかった費用が無駄になることの他にも、下記のような問題があります。
- 廃棄にコストがかかる
- 環境問題につながる
それぞれについて、解説します。
廃棄にコストがかかる
廃棄野菜の問題点のひとつは、廃棄にかかるコストです。
規格外野菜は売り物にならないため、畑にそのまま放置しトラクターすき込んで処分されることが一般的です。
この作業自体にも人件費や燃料費がかかります。
焼却処分する場合には運搬費や焼却費が必要です。
生産にかかったコストが無駄になったうえに、こうした費用も生産農家の負担となります。
環境問題につながる
野菜を廃棄する際に使うトラクターから出る排気ガスや、焼却処分によって発生するCO2は、温室効果ガスを増加させ地球温暖化につながります。
また、焼却スペースを新たに埋め立てる際に土壌汚染や水質汚だくといった別の環境問題が起こることも課題です。
廃棄野菜の活用法

廃棄される野菜をただ捨てるのではなく、さまざまな方法で再利用し、資源を有効活用する取り組みが進んでいます。
以下に代表的な活用法を紹介します。
直売所やECサイトでの販売
規格外の野菜は見た目が市場の基準に合わないため、通常の流通には乗りにくいですが、品質や味に問題がないものが多いです。
そのため、これらの野菜を直売所やオンラインを通じて直接消費者に提供して喜ばれています。
直売所は、地元の消費者に新鮮で安価な野菜を提供でき、農家にとっても無駄を減らす手軽な手段です。
また、近年では「食べチョク」や「らでぃっしゅぼーや」など、産地直送の農産物を取り扱うECサイトが拡大しており、規格外野菜を消費者が直接購入できる機会も増えています。
直売所やECサイトでの販売は、農家と消費者双方にメリットのある持続可能な取り組みといえるでしょう。
加工食品として利用
廃棄野菜を活用する方法として、加工食品に利用することが効果的です。ジュースやスムージー、ジャム、漬物といった食品に利用されています。
これらの加工食品では作物の見た目に左右されず、野菜本来の味や栄養を活かすことが可能です。
さらに、加工することで保存期間が長くなり、消費期限を延ばせるため、フードロスの削減にもつながります。
近年では規格外野菜を使ったスナック菓子や冷凍食品など、手軽に食べられる商品も登場しており、消費者の需要が高まっています。
飼料や肥料として再利用
家畜の飼料に利用されるケースも多く、豚や鶏などのエサとして有効活用をしています。
また、規格外野菜をそのまま畑にすき込んで、肥料として再利用することも多いです。
トラクターなどで畑に残った野菜を耕し、土壌に還元することで土壌の栄養分を補充できます。
技術革新を利用した新しい加工方法
最近では食品以外の用途に転用する取り組みも増えています。
例えば「おやさいクレヨン」という製品は、廃棄野菜などを原料にして作られた安心安全なクレヨンです。
また、野菜から取れる色素を利用して、服やスニーカーを染める技術も開発されています。
注目の技術|抽出装置を活用した廃棄野菜の新たな可能性

廃棄野菜の有効活用において、注目されている技術のひとつが、抽出装置を利用した方法です。
兼松エンジニアリングのマイクロ波抽出装置は、廃棄される野菜から有用成分を効率よく抽出でき、新たな可能性を広げています。
この装置の大きな特徴は、低温での抽出が可能であることです。
そのため、従来の水蒸気蒸留法と比較して、芳香成分を失わず、栄養価の高い成分を取り出せます。
特に柑橘類などの香り成分を逃さず、短時間で抽出可能です。
また、圧搾を行わず溶剤も使わないため、食品用としても安心して使用できます。
さらに、マイクロ波を利用して均一に熱を加えられるため、抽出環境を一定に保ちながら品質の高い製品を生み出せる点も有効なポイントです。
兼松エンジニアリングの抽出技術が持つこれらの特性を活かして、トマトを低温濃縮したソースなどの調味料の開発や、オリジナルフレーバー飲料を開発するのに利用されるなど、多様で豊富な実績をあげています。
この技術は、食品メーカーや香料メーカー、酒造メーカーなどさまざまな分野で導入され、オリジナル商品の開発に活用いただき廃棄物処理量の削減に繋がったメーカー様もおります。
お客様のニーズに合わせた設計にも対応できます。
詳細は、兼松エンジニアリングの公式サイトでご確認ください。
まとめ

廃棄野菜の問題は、日本の農業や食品流通における大きな課題です。
しかし、規格外野菜の活用法が拡大されることでその価値が見直され、食品ロスを削減する道が開かれつつあります。
兼松エンジニアリングの抽出装置も、導入することで規格外野菜を新たな資源として活用可能となり、新たな価値を生み出します。
今後も、このような技術を活用した取り組みが広がることで、規格外野菜が単なるゴミではなく、未来を変える資源へと生まれ変わるのです。
マイクロ波抽出装置に関するご質問や資料請求は、下記へお気軽にご連絡ください。
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