
マイクロ波による加熱装置を使った抽出技術が、食品や化粧品、医薬品などさまざまな分野で使われています。
短い時間で効率的に成分を取り出せ、製品の品質向上やコスト削減を実現することが可能です。
この記事では、マイクロ波加熱による抽出の特徴や、メリット・デメリットを解説します。
マイクロ波による加熱を活かした抽出に興味をお持ちの方は、この記事をぜひご覧ください。
マイクロ波による加熱が使われる場面

マイクロ波による加熱技術は、従来の加熱方法とは異なる仕組みや特徴を持ち、さまざまな分野で使われています。
たとえば、食品・医薬品・化粧品業界では多くの活用事例があります。
どのような分野でマイクロ波による加熱が使われるかを解説しましょう。
食品業界での活用
食品業界では、マイクロ波による加熱技術がさまざまな場面で重要な役割を担っています。
野菜や果物、ハーブなどの食材を乾燥させる際には、従来の熱風乾燥と比較して、より均一にすばやく水分を除去できます。
風味や栄養素の保持に優れた製品を生み出すことが可能です。
殺菌・滅菌処理が必要な場面でも、短い時間で均一に加熱でき、食品の中にいる微生物を効果的に不活性化できます。
さらに、健康食品や機能性食品の製造においても活用されています。
有効成分の抽出でマイクロ波による加熱を用いて、抽出時間を短くし、成分の品質も向上させることが可能です。
製薬・化粧品業界での活用
製薬や化粧品といった業界でも、マイクロ波による加熱を活かした取り組みが進んでいます。
薬用植物や天然素材から有効成分を抽出したい場面では、従来のやり方と比べて抽出時間を大幅に短くすることが可能です。
化粧品原料を製造する際にも、マイクロ波抽出には大きな利点があります。
熱で変性しやすい有効成分を保持しつつ、短い時間で高い品質のエキスを得られる点です。
医薬品製造の現場では、従来は数時間を要していた合成反応が、マイクロ波技術の応用により数分〜数十分で完了するケースも報告されています。
この時間短縮は、医薬品開発のスピードアップや生産効率の向上に直結します。
マイクロ波抽出における加熱の特徴

マイクロ波抽出の最大の特徴は、その独特な加熱メカニズムにあります。
これまでの抽出技術と比べると、マイクロ波抽出は効率性・速度・抽出物の品質の3点において優れた性能を発揮します。
マイクロ波抽出において加熱がどのように働くのかを、詳しく見ていきましょう。
マイクロ波加熱の基本原理
マイクロ波のよる加熱は、従来の加熱とは異なる仕組みで熱を加えます。
マイクロ波が物質に照射されると、水分子などが振動し始めます。
分子レベルでの揺れと分子の間で働く摩擦が熱エネルギーを発生させ、物質の内部から均一に加熱が進むのです。
水分を含む生物材料から抽出する場合には、この効果により、細胞の構造が壊される効果もあります。
細胞壁や細胞膜が破壊されることで、内部に含まれる有効成分が溶媒中に溶け出しやすくなるのです。
薬用植物から有効成分を抽出したい場面などでは、従来の方法では取り出しにくかった成分も、効率よく抽出できると期待できます。
マイクロ波による加熱と他の加熱方法の比較
これまでの加熱方法による熱の伝わり方は、主に「熱伝導」「対流」「熱放射(輻射)」の3種類があります。
これらに共通しているのは、加熱したい対象物よりも高い温度となる熱源が必要な点です。
一方、マイクロ波による加熱は、分子レベルの振動と摩擦を利用し物質の内部から熱するため、加熱したい対象よりも高い温度の熱源は必要ありません。
マイクロ波による加熱では、従来の抽出法に比べて短時間で処理でき、エネルギーの消費も節約できます。
マイクロ波抽出における加熱のメリット・デメリット

マイクロ波による抽出を利用するなら、メリットとデメリットを十分に理解する必要があります。
長所と短所をきちんと検討することで、自社の製品や工程に適した抽出方法を選べるようになるからです。
マイクロ波による抽出のメリットとデメリットについて、詳しく解説します。
メリット
マイクロ波抽出の大きなメリットは、抽出時間の大幅な短縮です。
従来のやり方では数時間〜1日以上かかっていた抽出が、マイクロ波による抽出ならば数分〜数十分に短縮できる事例もあります。
時間を短縮できると、製品の開発サイクルを早め、生産性の向上に直結します。
抽出効率と収率の向上も、マイクロ波による抽出の重要な利点です。
マイクロ波によって細胞が壊されると有効成分が溶け出しやすくなり、効率よく抽出することが可能です。
高品質な抽出物を獲得するためにも、マイクロ波による抽出は優れています。
マイクロ波による抽出であれば、短時間での処理で済ませられるため、熱に弱い成分の分解や酸化を最小限に抑えられます。
特に香料成分や抗酸化物質など、熱や酸素に弱い成分を含む製品を作る際には、この点がとても重要です。
デメリット
一方で、マイクロ波による抽出にはいくつかデメリットもあります。
まず、設備を導入するための初期投資が必要となる点です。
マイクロ波による抽出・加熱装置の導入には、相応の設備投資が求められます。
マイクロ波による抽出を実施するには、操作技術や専門知識が必要になる可能性も考慮すべきです。
抽出装置を運用するには、マイクロ波の特徴や最適な出力設定、照射時間などについて知っておく必要があります。
ただし、簡単に操作できるマイクロ波抽出装置を導入すれば、このデメリットは解決できます。
マイクロ波による抽出を導入するなら、安全管理上の注意点も見過ごせません。
マイクロ波抽出では、溶媒を急激に加熱することで圧力上昇のリスクがあります。
特に引火性の高い溶媒を使う場合には、火災や爆発に注意が必要です。
マイクロ波抽出のランニングコスト

マイクロ波による抽出技術の導入には、初期投資が必要だと紹介しました。
しかし、ランニングコストの面からも費用対効果を考えることが重要です。
多くの企業にとって、マイクロ波抽出を利用すれば、長期的にはコストを削減できると見込まれます。
マイクロ波による加熱では、高高温となる熱源を必要とせず、エネルギー効率が大きく改善するためです。
具体的な事例として、マイクロ波による加熱を活用した精油の生成があげられます。
従来の水蒸気蒸留法と比較して、ランニングコストが劇的に減ると報告されています。
今回の事例では、マイクロ波技術を活用すると、ランニングコストが5分の1から9分の1程度にまで低減できるとの結果を示しました。
引用元:https://www.jspmi.or.jp/system/file/3/1102/n10-4.pdf
まとめ

マイクロ波加熱による抽出は、食品・製薬・化粧品など幅広い分野で活用されています。
この抽出方法には、抽出時間の短縮や品質の向上など、大きなメリットがあります。
一方で、マイクロ波加熱による抽出を行うためには、設備への初期投資が欠かせません。
投資が成功するカギは、誰でも簡単に操作でき、優れた性能を持つ装置を導入できるかです。
兼松エンジニアリングのマイクロ波抽出装置であれば、高い性能で低温での抽出も可能です。
さまざまな分野において、専門知識がなくても簡単な操作で、マイクロ波加熱による抽出のメリットを十分に発揮できます。
知識と経験を兼ね備えた当社の技術スタッフが、お客様のご相談やご要望にもお応えします。
マイクロ波加熱による抽出についてより詳しく相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
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