
日本国内では、毎年大量の規格外野菜が廃棄されています。
形やサイズが規格に適合しないだけで、品質に問題のない野菜が市場に流通せず、食品ロスの一因にもなっているのです。
農林水産省のデータによると、2020年度の国内における規格外野菜の廃棄量は約200万トンに達し、収穫量全体の約6%に相当します。
これらの廃棄は、環境負荷の増加や農家の収益減少を招き、社会全体に影響を及ぼす要因なのです。
本記事では、規格外野菜が生まれる背景、廃棄量の実態、活用方法、そして規格の見直しの可能性について詳しく解説します。
規格外野菜とは? 定義と生まれる原因

規格外野菜とは、形やサイズが市場の基準を満たさない農産物です。
見た目の違いによって廃棄されるケースが多いものの、品質や味には問題ありません。
なぜ規格外野菜が生まれるのか、その背景について詳しく見ていきます。
規格外野菜の定義|形、大きさ、傷以外の要因もある
市場に出荷される野菜には厳格な規格が設けられており、形やサイズが均一であることが必要です。
規格外野菜とは、これらの基準に適合しない農産物を指します。
具体的には、サイズが基準値を外れているもの、表面に傷があるもの、変色が見られる野菜です。
しかし、これらの要素はあくまで外観上の問題であり、味や栄養価には影響がありません。
このような基準が設けられる背景には、消費者が見た目の整った野菜を好む傾向が影響しています。
市場競争の激化に伴い、スーパーや飲食店では見た目の美しい野菜が優先的に取り扱われるため、規格外品の多くが廃棄され続けています。
日本の農業システムと「出荷規格」という壁
日本の農業システムでは、均一な品質と外観を確保するために厳格な出荷基準が設けられています。
消費者は常に高品質な野菜を手に入れられるものの、一方で大量の規格外野菜が発生する原因にもなっています。
農家は市場の基準に合わせた野菜を生産するため、出荷規格を満たさない野菜を流通させる手段を持たず、廃棄せざるを得ません。
特に大規模生産者にとっては、規格外野菜を別の方法で販売する手間やコストが高くつくため、廃棄を選択するしかないという現実があります。
こうした仕組みが、食品ロス問題の一因です。
データで見る規格外野菜の廃棄量とその影響

規格外野菜の国内における廃棄量は年間200万トンに達し、大きな環境問題と経済的損失を引き起こしています。
この実態をデータとともに確認し、規格外野菜が社会に及ぼす影響について考えます。
規格外野菜の廃棄量は、推定で年間約200万トンです。
これは日本の農産物全体の収穫量の約6%にあたり、決して無視できない数字です。
こうした大量廃棄は、環境負荷の増加にもつながります。
焼却による処理ではCO₂を排出量するだけでなく、廃棄野菜が増えれば、それだけ多くのエネルギーも必要になるからです。
また、経済的な影響も大きく、農家は規格外野菜を出荷できないために収益が減少し、廃棄コストの負担も増加します。
さらに、食品ロスが続くことで食料自給率の低下や食料価格の高騰につながる可能性もあります。
こうした課題に対応するために、規格外野菜の有効活用が必要です。
規格外野菜の多様な活用方法

規格外野菜の活用は、食品ロス削減だけでなく、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性があります。
ここでは、具体的な活用方法を紹介していきましょう。
加工食品メーカーでの活用|原料コスト削減と商品の多様化
規格外野菜は、ジュースやスープ、ジャム、冷凍食品などの加工食品の原料として活用できます。
この活用法により、食品メーカーは原料コストを削減できるだけでなく、持続可能な食品生産の取り組みをアピールできます。
カット野菜やペーストなど、規格外野菜を加工した中間原料のBtoB取引も有効な方法です。
外食産業での活用|メニュー開発と食品ロス削減
レストランやカフェなどの外食産業では、規格外野菜を積極的に活用したメニューを提供することで、食品ロス削減に貢献できます。
規格外野菜のユニークな形状や色合いを活かした、創造的なメニュー開発が可能です。
規格外野菜の使用をPRすれば、企業の社会的責任(CSR)活動の一環としてアピールもできます。
その他の活用|飼料、肥料、バイオマスエネルギー
規格外野菜を家畜の飼料や、堆肥の原料として活用することで、資源の有効活用が可能です。
規格外野菜からバイオマスエネルギーを生成する技術も開発されており、再生可能エネルギーとしての活用も期待されています。
マイクロ波抽出装置の活用|高付加価値成分の抽出

マイクロ波抽出装置は、規格外野菜から機能性成分や香気成分を効率的に抽出する技術です。
従来の抽出方法に比べて、抽出時間の短縮、抽出効率の向上、溶媒使用量の削減などが期待できます。
抽出された成分は、食品添加物、化粧品、医薬品原料など、高付加価値製品の原料として利用可能です。
マイクロ波抽出は、低温で処理できるため、熱に弱い成分の抽出にも適しています。
主に5つのメリットがあります。
- 抽出時間短縮によって生産効率の向上が見込める
- 溶媒使用量削減、エネルギー効率向上によるコスト削減が可能
- 低温抽出による成分の劣化防止、高品質な抽出物の製造できる
- 規格外野菜からの高付加価値成分抽出による、新たなビジネスチャンスの創出
- 減圧下で加熱蒸留でき、熱に弱いデリケートな素材の加熱、蒸留、濃縮にも対応
参考:http://kanematsu-mwextract.jp/
規格の見直しは可能か

「規格外野菜の廃棄量を減らすためには、規格の見直しが必要である」という意見があります。
BtoB取引においては、品質基準の明確化と同時に、ある程度の柔軟性を持たせることが重要です。
国際的な基準との整合性を図ることも、検討すべき課題です。
規格外野菜の活用とSDGsへの貢献

規格外野菜の活用は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に大きく貢献します。
具体的には「つくる責任つかう責任」や「飢餓をゼロに」といった目標の達成に貢献が見られます。
食品ロスを減らし、資源を有効活用することで、持続可能な社会の実現に貢献できるものです。
規格外野菜活用によるサプライチェーン構築

規格外野菜の活用には、安定供給、品質管理、情報共有などの課題が存在します。
これらの課題を解決するためには、生産者、流通業者、食品メーカー、外食産業などが連携したサプライチェーンの構築が不可欠です。
BtoBプラットフォームの活用、規格外野菜に関する情報共有の促進、共同での商品開発などが、今後の取り組みとして考えられます。
政府や自治体による支援策(補助金、税制優遇など)も、規格外野菜活用の推進力となり得ます。
消費者の意識改革も重要であり、規格外野菜に対する理解を深めるための啓発活動も並行して行うことが必要です。
規格外野菜の価値を「見える化」し、BtoB取引における新たなスタンダードを確立することが、持続可能な食料システムの構築につながります。
まとめ

規格外野菜の廃棄は、日本の食品ロス問題の大きな要因です。
活用方法の多様化や規格の見直しを進めることで、環境負荷の軽減や農家の収益向上が期待されます。
今後は、企業や消費者が一体となり、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化していくことが求められるでしょう。
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