
マイクロ波加熱装置は、食品、医薬品、化学、電子部品などさまざまな分野で活用されている加熱技術です。
従来の熱伝導による加熱とは異なり、電磁波を利用して物質の内部から直接加熱するため、高効率かつ均一な加熱が可能になります。
本記事では、マイクロ波加熱装置の仕組みや特徴、メリット・デメリット、活用事例について詳しく解説します。
マイクロ波加熱装置とは

マイクロ波加熱装置とは、電磁波(マイクロ波)を利用して物質を内部から直接加熱する装置です。
電子レンジの加熱原理と同様に、マイクロ波が物質中の水分子を振動させ、摩擦熱を発生させることで加熱します。
この技術は、食品業界だけでなく、医薬品の乾燥、化学反応の促進、工業材料の加熱・焼成など、さまざまな用途に応用されています。
マイクロ波加熱装置の特徴

マイクロ波加熱装置は、従来の加熱方式と異なる独自の特徴を持っています。
そのため、幅広い業界で活用されており、効率的な加熱が求められる場面で特に有効です。
ここでは、マイクロ波加熱装置の特徴を紹介します。
内部加熱
物質の内部から均一に加熱できるため、外部からの熱伝導を必要とせず、短時間で効率的な加熱が可能です。
従来の加熱方式では、表面から徐々に熱が伝わるため、温度の均一化に時間がかかることがありました。
しかし、マイクロ波加熱では、内部の分子運動を直接活性化させることで、全体を均一に温めることができます。
特に、含水率が高い物質に対しては、従来の方法よりも効率的な加熱が可能です。
高速加熱
短時間で効率的に温度を上げることが可能であり、プロセス全体の時間を短縮できます。
従来の熱伝導加熱では、温度が上昇するのに時間がかかることが多くありました。
マイクロ波による加熱の高速性は大きな利点です。
選択加熱
水分や特定の極性分子を持つ物質を優先的に加熱できるため、乾燥や殺菌などの用途に適しています。
特に、食品や医薬品の分野では、不要な成分への熱影響を抑えながら重要な成分を効率的に処理できる点は大きな強みです。
エネルギー効率が高い
従来の加熱方法に比べて熱のロスが少なく、エネルギーを有効活用できます。
特に、マイクロ波加熱装置は直接対象物にエネルギーを供給するため、周囲の環境への熱影響が少なく、エネルギーの無駄を最小限に抑えることが可能です。
非接触加熱
火や熱源を直接使用することなく加熱が可能であり、衛生管理の面でも利用しやすい特徴があります。
また、非接触加熱は、食品加工や医薬品の滅菌・乾燥工程において、製品の品質を損なわずに処理を行えるため、広く活用されています。
メリット

マイクロ波加熱装置を導入することで、以下のようなメリットが得られます。
- 加熱時間の短縮
- エネルギー効率の向上
- 温度制御が容易
- 選択的加熱が可能
- 非接触加熱で安全性が高い
それぞれ解説しましょう。
加熱時間の短縮
従来の熱伝導方式と比較すると、加熱時間を大幅に短縮できる点が特徴です。
マイクロ波加熱では、対象物の内部から直接エネルギーを供給できるため、外部からの熱伝導に頼る従来の加熱方法よりも遥かに短時間での加熱が可能です。
エネルギー効率の向上
直接内部加熱が可能なため、外部からの加熱と比べてエネルギーの無駄が少なくなります。
これは、従来の加熱方法のように周囲の環境や加熱容器に無駄な熱が逃げることなく、ターゲットとなる物質そのものにエネルギーを集中させられるからです。
特に、大規模な産業プロセスにおいては、エネルギーコストの削減に貢献する要素となります。
温度制御が容易
急速な加熱・冷却が可能であり、プロセスの細かい調整が容易になります。
短時間での加工や乾燥プロセスが実現し、大幅な生産性向上が期待できます。
また、温度変化が迅速に行えることで、温度管理が求められる化学反応や医薬品製造にも適しており、高精度な制御が可能です。
選択的加熱が可能
含水率の高い部分を優先的に加熱する点が、食品や医薬品の乾燥・殺菌に適しています。
この特性は、特に食品加工業界で有用であり、果物や野菜の水分を効率的に蒸発させることで、品質を損なわずに保存期間を延ばすことが可能です。
従来の乾燥方法では、長時間の加熱が必要となり、風味や栄養成分の損失が発生することがありましたが、マイクロ波加熱を用いることで、これらの問題を最小限に抑えられます。
非接触加熱で安全性が高い
火を使わないため、食品や医薬品の衛生管理がしやすく、安全性の向上につながります。
また、非接触加熱のため、クリーンルーム環境下でも活用しやすく、医療機器の製造やバイオテクノロジー分野でも利用が拡大しています。
ガスや火を使用しないことにより、作業現場の安全性が高まり、火災のリスクを大幅に軽減する技術です。
デメリット

マイクロ波加熱装置には加熱時間やエネルギー効率の面などで多くのメリットがありますが、活用する際にはいくつかの課題も存在します。
実際に取り入れる場合には、適用範囲や使用条件を理解した上で導入することが重要です。
加熱ムラが発生する
物質の形状や成分によっては、加熱ムラが発生することがあります。
これは、マイクロ波が物質の内部で均一に分布しないために起こる現象です。
特に、大きな塊状の物質や密度が不均一な素材では、部分的に過熱が発生したり、逆に加熱が不十分な部分が残ったりすることがあります。
金属との相性が悪い
マイクロ波は金属に反射するため、金属製の容器や装置内部の金属部品に影響を及ぼす可能性があります。
これは、マイクロ波が電磁波であるため、金属表面で反射しやすく、意図しない電磁干渉を引き起こす原因となるためです。
そのため、マイクロ波加熱装置を使用する際には、加熱対象となる物質や容器の選定が重要になります。
適用範囲に制限がある
乾燥や加熱には適していますが、特定の化学プロセスには適用しにくいケースもあるため、導入する際には注意が必要です。
例えば、マイクロ波加熱は均一な加熱を実現しにくいため、特定の温度制御が厳密に求められる化学反応には適していないことがあります。
マイクロ波加熱装置の用途

マイクロ波加熱装置は食品加工、医薬品製造、化学分野や工業分野など、多岐にわたる広い領域で用途があります。
ここでは、マイクロ波加熱装置が、具体的にどのような分野や用途で利用されているか見ていきましょう。
食品業界
食品業界では、マイクロ波加熱装置が多くの場面で活用されています。
例えば、冷凍食品の解凍や加熱調理に利用されており、短時間でムラなく仕上げることが可能です。
さらに、食品中の細菌や微生物を効果的に除去する殺菌・滅菌工程にも使用され、安全性を向上させる役割を果たしています。
また、パスタやフリーズドライ食品の製造過程においても、水分を効率的に除去する乾燥処理に用いられています。
医薬・化学業界
医薬・化学業界でも、マイクロ波加熱装置が幅広く利用されています。
医薬品の製造過程では、成分の劣化を防ぎながら短時間で乾燥できるため、生産性向上に貢献しています。
また、化学分野では、触媒を用いた反応の促進や反応制御がしやすくなり、より精密なプロセス管理が実現可能です。
工業用途
工業分野では、樹脂やプラスチックの加熱・成形に用いることで、製品の均一な加工が可能になり、生産性向上につながります。
また、電子部品の乾燥や焼成においても、素早くムラのない仕上がりが期待できます。
さらに、廃棄物の処理や減容化にも応用されている技術です。
マイクロ波加熱方式の連続抽出・乾燥装置

兼松エンジニアリングは、最先端のマイクロ波技術を活用した装置を開発し、さまざまな産業で注目を集めています。
その成果のひとつが、「高効率マイクロ波減圧精油抽出装置」であり、令和元年度四国地方発明表彰を受賞しました。
この装置は、マイクロ波と減圧を組み合わせることで、従来よりも低温で精油抽出を実現します。
また、エネルギー消費を抑えながら抽出が可能なため、環境負荷の低減にも寄与します。
まとめ

マイクロ波加熱装置は、食品・医薬・化学・工業分野で活用される高効率な加熱技術です。
今後、環境負荷の低減や持続可能な生産技術の実現に向けて、マイクロ波加熱装置のさらなる発展が期待されます。
マイクロ波抽出装置にご興味がある方は、下記へお気軽にご連絡ください。
<お問い合わせ先>
兼松エンジニアリング株式会社
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