
形が不揃い・サイズが基準外・色むらがあるなどの理由で、市場に出されない野菜が規格外野菜です。
見た目の問題だけで捨てられるこれらの野菜は、本来ならば十分に食べられるものです。
近年の食品ロスが問題視される中、規格外の野菜を上手に活用する方法が注目を集めています。
農林水産省も食品ロス削減に向けた取り組みを進めており、フードバンク支援や新技術の導入促進などの施策を発表しました。
本記事では、規格外野菜の現状や活用法、そして最新技術を活かした食品ロス削減策について詳しく解説します。
規格外野菜とは

市場に出回る野菜には厳格な規格があり、見た目やサイズが基準外のものは規格外として扱われます。
これらの野菜の多くは品質の面では何も問題がないにも関わらず、捨てられているのが現状です。
規格外野菜とは
規格外野菜とは、市場で定められた流通基準に適合しない野菜を指します。
例えば、形がいびつであったり、大きさが基準よりも小さかったり大きすぎたりすることで、一般の流通ルートに乗せにくいものです。
こうした野菜は質や味の点で問題があるわけではなく、栄養価も通常の野菜と変わりません。
それにも関わらず、見た目の問題だけで市場に出回らず廃棄されるケースが多く、食品ロスの一因となっています。
野菜の規格はどのように設定されているか
かつて、日本の野菜には全国統一の規格が存在し、1970年に農林水産省が「野菜の全国標準規格」を定めていました。
この基準は流通の効率化や品質の均一化を目的として全国で適用されていました。
その後、2002年にこの制度は廃止され、現在は各産地や出荷団体が独自に規格を設定する形になっているのです。
現在の野菜の規格は、主に市場での流通を円滑にするために決められています。
具体的には、サイズ、重量、色、形状などの基準があり、消費者が見た目で選びやすいことや、輸送・保管のしやすさが重視されています。
しかし、これらの規格が厳しすぎるため、市場に出せない規格外の野菜が多く発生し、その大半が処分されているのです。
規格から外れた野菜の有効活用を進めることで、食品ロス削減や生産者の負担軽減につながる可能性があります。
農林水産省の統計から見る規格外野菜の廃棄量

市場に出されていない規格外の農産物は、どの程度廃棄されているのでしょうか。
ここでは、農林水産省の統計から見る規格外野菜の廃棄量と、それらがどこに行っているのかについて解説します。
規格外野菜の廃棄量に関する農林水産省の統計はない
農林水産省は、規格外の農産物の廃棄量に関する具体的な統計を公表していません。
そのため、正確な廃棄量を把握するのは難しいのが現状です。
しかし、農林水産省の作況調査に基づき、収穫量と出荷量の差を参考にすると、一定の推測が可能になります。
例えば、直近の野菜の収穫量と出荷量のデータを見ると、収穫された野菜の約15%が市場に流通していないことがわかります。
ただし、このデータには収穫されずに畑で廃棄された野菜は含まれていません。
実際には、さらに多くの野菜が市場に出ることなく処分されていると考えられます。
参照:農林水産省「作況調査(野菜)」
規格外野菜の行方
規格外の野菜がすべて廃棄処分されているわけではありません。
有効活用されるケースも増えており、主な利用方法には以下のようなものがあります。
● 直売所やオンラインサイトでの販売:専門の販売サイトを活用し、消費者に直接届ける。
● 加工食品としての利用:ジュース、スムージー、冷凍食品などに加工する。
● 飼料・肥料としての再利用:畑に戻して土壌改良材とするほか、家畜のエサとして活用する。
農林水産省が発表した食品ロス対策

農林水産省は、食品ロス削減を重要な課題と位置づけ、2000年度比で2030年度までに事業系食品ロスを半減させる目標を掲げています。
その実現のための主な施策を見ていきましょう。
フードバンク活動の支援
農林水産省は、食品ロス削減の一環としてフードバンク活動を支援しています。
フードバンクとは、食品関連事業者から提供された未利用食品を、福祉施設や生活困窮者に無償で配布する仕組みです。
これにより、まだ食べられるのに廃棄処分されている食品が有効に活用され、食品ロスの削減につながります。
さらに、必要な人々に食品を届けることで、社会的な支援の役割も果たしています。
食品関連事業者の支援
食品ロス削減を促進するため、新技術の導入や効率的な流通システムの構築を行う事業者に対する支援を実施しています。
例えば、規格外の農産物を長期間保存可能にする加工技術の開発や、廃棄を減らすための流通改善を行う企業には、調査や報告書作成にかかる費用の支援が提供されます。
食品ロス削減に関する啓発活動
農林水産省は、食品ロス削減のための啓発活動を積極的に推進しています。
消費者庁や環境省と連携し、食品ロスの現状や削減方法を紹介するガイドブックを作成したり、講習会やキャンペーンなどの啓発イベントを開催したりしています。
消費者の意識を高め、食品を無駄にしない行動を促進することが目的です。
規格外野菜の活用法

規格外の農産物は、以下のような方法で活用されています。
● 直売所やオンラインサイトでの販売
● 加工食品としての利用
● 飼料や肥料としての再利用
● 技術革新を利用した加工方法による新たな価値創造
それぞれ詳しく見ていきましょう。
直売所やオンラインサイトでの販売
近年、規格外農産物の販売方法として、直売所やオンラインサイトを活用することが増えています。
農家が直接販売することで、中間コストを削減し、消費者に新鮮な野菜を手頃な価格で提供できるのが特徴です。
特にオンラインサイトでは、全国の農家から直接購入できるサービスが充実しており、フードロス削減への関心が高まる中、利用者が増えています。
また、専門のサイトも登場し、訳あり品として手軽に購入できる仕組みが整いつつあります。
加工食品としての利用
規格外の野菜を、ジュース、ゼリー、スムージー、カット野菜などに加工することで、有効活用する取り組みが進んでいます。
形や大きさに関係なく利用できるため、見た目が基準外の野菜も価値ある商品へと生まれ変わるのが、この取り組みが広まっている理由です。
食品メーカーも規格外の野菜の活用に注目し、食品ロスの削減と原材料コストの最適化を両立する取り組みを進めています。
加工することで保存期間が延びるため、安定した供給が可能となるというメリットもあります。
飼料や肥料としての再利用
規格から外れた野菜は、家畜の飼料や堆肥として再利用されるケースが増えています。
家畜のエサとして利用することで、捨てられる野菜を有効に用いながら、畜産業のコスト削減にも貢献できるという手法です。
また、規格から外れた野菜を畑に残し、耕うん機で土にすき込むことで有機肥料として活用する取り組みも広まっています。
技術革新を利用した加工方法による新たな価値創造
近年では、廃棄野菜を原料にした合成皮革、染料、クレヨンなどの開発も進んでいます。
これにより、食品として消費されない野菜も新たな価値を持つようになりました。
規格外の果物や搾汁後の果実を活用した事例

四国地方はさまざまな柑橘類の産地として知られています。
柚子の果汁が飲料などに利用される一方で、搾汁後に残る果皮はほとんどが廃棄されてしまっていました。
しかし、近年ではマイクロ波を利用した精油抽出技術が開発され、香りの良い精油などが高く評価されています。
この技術により、柑橘類の果皮から得られた精油は、化粧品やアロマミスト、飲料などに活用されるようになりました。
廃棄物として処理されていた部分が新しい資源として生かされる道が開かれています。
まとめ

日本の農業や食品流通では、廃棄処分されている規格外野菜の扱いは依然として深刻な課題です。
しかし有効な利用方法が拡大することで、その価値が再認識され、食品ロス削減の新たな可能性が生まれています。
兼松エンジニアリングのマイクロ波を用いた抽出技術を導入することで、これまで廃棄されていた野菜を有効な資源として活用できるようになり、新たな付加価値が創出されます。
今後もこのような技術が普及することで、廃棄される野菜は単なる不要物ではなく、社会や環境に貢献する貴重な資源として生まれ変わるでしょう。
マイクロ波抽出装置に関してご興味がある方は、下記へお気軽にご連絡ください。
<お問い合わせ先>
兼松エンジニアリング株式会社
コメントを残す