
工業分野において欠かせない存在である溶媒にはさまざまな種類があります。
多くの種類がある中で特に幅広く活用されている重要なものが極性溶媒です。
本記事では極性溶媒について、無極性溶媒との違いから具体的な活用例まで詳しく紹介します。
極性溶媒とは

極性溶媒とは何なのか、基本的な点についてまとめました。
極性溶媒がどのような溶媒か、代表例や種類、無極性溶媒との違いを紹介します。
極性分子で構成される溶媒を極性溶媒と呼ぶ
極性溶媒とは極性分子によって構成されている溶媒のことです。
極性とは電荷の偏りのことで、化学反応において重要な要素です。
極性分子を代表するものには水や塩化水素、アンモニア、エタノールなどが挙げられます。
水分子の場合は、酸素の原子核が水素の電子を引き寄せることで分子内に電気的な偏りが発生しています。
極性溶媒は極性のある物質を溶かしやすい
極性溶媒は極性のある化合物やイオン化合物などが溶解しやすい点が特徴です。
例えば、イオン化合物である食塩(塩化ナトリウム)が水によく溶けることはよく知られています。
極性溶媒を構成する極性分子は電荷が偏っているため、極性のある物質を加えると電荷のプラスとマイナスが引き寄せ合い、溶けた状態になります。
磁石のN極とS極が互いに引き寄せ合うのと原理的には似ていると考えましょう。
プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の2種類がある
プロトン性溶媒とは、水酸基(-OH)を持つ溶媒のことです。
一方、非プロトン性溶媒は水酸基(-OH)を持ちません。
プロトン性溶媒の代表例には水やエタノール、酢酸などがあります。
非プロトン性溶媒の代表例はジメチルスルホキシドやアセトン、ジクロロメタンなどです。
水酸基(-OH)の有無によって性質が変わるため、目的に応じて使い分けられています。
無極性溶媒との違い
極性溶媒と無極性溶媒は、分子内の電子の偏りが異なるため、に沸点にも違いがあります。
無極性溶媒は構成する分子に電子の偏りがない溶媒で、非極性の物質が溶けやすい特徴を持ち、油やベンゼンなどを溶解できます。
例えば、ベンゼンは分子式がC6H6で、同一平面上に全ての原子が存在していて、非常に安定している物質です。
ベンゼンは炭素と水素原子のみで構成され、分子内に電子的な偏りは発生しません。
無極性溶媒はファンデルワールス力により弱い力で分子同士がつながっているため、沸点が低いという特徴があります。
極性溶媒は電子の偏りによる静電気的な引力によって強い力でつながっていて沸点が高いため、分子を気化させるには高温による加熱が必要です。
主な極性溶媒の一覧

代表的な極性溶媒とそれぞれの性質を表にまとめました。
| 極性溶媒 | 特徴 |
|---|---|
| 水 | 毒性がなく安価で使いやすい |
| エタノール | 比較的毒性が低く工業的によく使われる |
| アセトン | 化合物をよく溶かす |
| DMAC(ジメチルアセトアミド) | 反応溶媒として広く使われる |
代表的な極性溶媒について、それぞれの特徴を紹介します。
水
水は極性プロトン性溶媒の代表的なもので、非常に有用な溶媒として重宝されています。
安価で入手できて毒性はなく、環境にも優しい物質です。
水の活用方法については研究開発が盛んに行われており、近年は遷移金属触媒や相間移動触媒などさまざまな手法が確立されています。
実際に工業的に水を用いる場合に使われるのは、不純物が取り除かれた純度の高い精製水です。
水道水にはミネラル分も含まれているため、製品の製造プロセスで用いるのには適していません。
工業用水の分類として水道水と純水、超純水があり、超純水は最も純度が高く高品質な水です。
エタノール
エタノールは極性プロトン性溶媒としてさまざまな用途に用いられています。
メタノールとよく似た特徴を有しているものの、エタノールの方が毒性は低い点が特徴です。
エタノールはお酒の中にも含まれており、消毒剤や食品添加物、燃料などとしても使われています。
エタノールが溶媒として使われる主なケースは、最終工程の反応確認や晶析溶媒を目的とする場合などです。
他には、金属組織の観察をしやすくするために必要な腐蝕液の溶媒として使われるケースもあります。
アセトン
アセトンは水や油脂などに溶けやすい性質があり、幅広い用途に用いられています。
アセトンが身近で使われているケースとして有名なものはマニキュアの除光液です。
他には標本を作るための脱脂に利用されるケースや、実験器具の洗浄に使われるケースなどがあります。
水とは混ざりにくい溶媒を混ぜる際にアセトンが使われるなど、幅広い用途があります。
アセトンは引火性があり、毒性も高いとされているため、扱いには十分に注意しなければなりません。
DMAC(ジメチルアセトアミド)
DMAC(ジメチルアセトアミド)は有機物と無機物の両方をよく溶かすのが特徴です。
沸点・引火点が高く、化学的に安定していて毒性が低いといった性質があり、工業的に広く用いられています。
さまざまな反応溶媒として使われており、製造メーカーには欠かせない存在です。
例えば、有機合成反応や樹脂、塗料などの溶剤としてよく用いられています。
類似の溶媒と比べて毒性は低いのですが、DMAC(ジメチルアセトアミド)にも有毒性があると報告されているため、扱いには注意が必要です。
極性溶媒の活用例

極性溶媒は実際にどのような用途で活用されているのでしょうか。
ここでは、具体的な事例を紹介します。
洗浄剤
極性分子が溶けやすいという性質を利用して、極性溶媒は洗浄剤として活用されるケースが一般的です。
洗浄剤の種類の1つである水系洗浄剤は、水を溶媒として界面活性剤を含んでいます。
水系洗浄剤には酸性とアルカリ性、中性のものがあり、汚れの種類に合わせて使い分けます。
準水系洗浄剤という洗浄剤にも極性溶媒が使われており、水溶性の汚れと油分汚れの両方の洗浄が可能です。
製造プロセスにおいて汚れが付着したままでは不良の原因となるため、どんな業界であっても製造プロセスにおいて洗浄剤は欠かせない存在です。
精製溶媒
精製溶媒とは精製工程に使われる溶媒のことであり、除去が容易で製品に残留しにくいといった性質を有しているのが特徴です。
例えば、医薬品の製造工程などで精製溶媒が用いられています。
精製は製造プロセスにおける最終工程で、製品の品質に与える影響が大きいため、効率性の高さや環境負荷の低さなど、さまざまな観点から適切な溶媒を選ばなければいけません。
高品質な製品を精製するために、溶媒は重要な役割を果たしています。
印刷インキの溶剤
印刷インキ用の溶剤としても極性溶媒はよく用いられています。
印刷インキとは印刷をする際に使われる着色剤のことであり、極性溶媒によりインキは流動性を与えられて、印刷素材に転移できるようになります。
印刷インキによく使われる極性溶媒はIPAやトルエン、MEKなどです。
沸点が低くて乾きやすく、毒性が少ないものが印刷インキ用の溶剤として選ばれます。
印刷インキの溶剤は、印刷の見た目の美しさや仕上がりまでのスピードに影響する重要な要素です。
インキとの相性も重要になるため、印刷インキや目的などに合わせてさまざまな極性溶媒が使われています。
マイクロ波加熱を活用した溶媒抽出
マイクロ波加熱によって、試料から有用成分を抽出する際に極性溶媒が使われています。
マイクロ波加熱し試料の細胞が破壊されて有用成分が出てきた際、極性溶媒と接触させて溶かします。
溶媒に有用成分が溶けてから試料を分離することで、有用成分のみを取り出すことが可能です。
また、マイクロ波加熱を活用して、水などの溶媒を使わずに有用成分を取り出せるマイクロ波抽出装置も開発されています。
マイクロ波抽出装置は試料に含まれる水分を利用して蒸留を行い、有用成分を抽出できる装置です。
マイクロ波抽出装置は溶媒を使う必要がなく、低温で抽出できるなどの特徴があり、デリケートな成分の抽出に適しています。
柑橘類など熱に弱い果物から香り成分を抽出してフレーバーとして利用するなど幅広い用途に使える技術です。
参考:http://kanematsu-mwextract.jp/
まとめ

極性溶媒は極性分子によって構成されており、極性分子が溶解しやすい性質を持っています。
洗浄剤や溶媒抽出など幅広い用途に使われており、製造メーカーにとって必要不可欠な存在です。
ただし、極性溶媒には毒性の強いものがあり、工場排水として放出されれば環境破壊の原因になる点などが問題視されています。
マイクロ波抽出装置であれば溶媒を使わずに抽出処理を進めることが可能です。
マイクロ波抽出装置を活用すれば溶媒の廃棄処理にかかるコストを削減でき、環境にも配慮した方法で有用成分の抽出ができます。
例えば、柑橘の果皮や果物から精油や芳香蒸留水を抽出して商品化することが可能です。
マイクロ波抽出装置に興味のある方はお気軽に兼松エンジニアリング株式会社までお問い合わせください。
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