
蒸留とは、液体に熱を加えて成分を気化・分離し、温度を下げて特定の成分を抽出する技術です。
お酒の製造や医薬品の精製、海水淡水化、原油の分留など、私たちの生活に密接に関わる技術として広く活かされています。
本記事では、蒸留の基本原理や種類、具体的な用途、最新技術について詳しく解説します。
蒸留とは

蒸留とは、液体に含まれている成分ごとの「沸点の違い」を利用して分離を行う手法です。
例えば、混合された液体に熱を加えると、沸点の低い物質が先に気化します。
この気化した物質を冷やす装置に通すことで液体に戻し、純粋な形で回収することが可能です。
蒸留は、アルコールを含む発酵液からアルコール成分を取り出す際や、原油をガソリンや灯油などの異なる成分に分ける際に用いられます。
蒸留の仕組み

蒸留の技術は、化学、食品、医薬品などの分野で幅広く用いられています。
ここでは、その仕組みを解説します。
基本的な原理
蒸留は、液体の異なる成分が持つ「沸点の違い」を活用して物質を分離する技術です。
例えば、混合された液体を熱すると、沸点が低い物質が優先的に蒸発します。
この気化した物質を冷やす装置に通らせることで液体にし、純粋な成分を取得することが可能です。
蒸留の工程
蒸留の基本工程は「加熱」「冷却」「回収」の3つのステップに分かれます。
まず、液体を加熱し気化させます。
このとき、沸点の低いものが先に蒸発し、他の物質と分離されるのです。
次に、気化したものを冷やす装置に通し、温度を下げて液体に戻します。
こうした冷却する工程によって、気化した成分が凝縮し、目的の物質が再び液体の形で取り出せるのです。
最後に、温度を下げられた液体を適切な容器に移し、必要な成分だけを取得します。
この工程を繰り返すことで、より純度の高い物質を得ることが可能になるのです。
蒸留の種類

蒸留にはさまざまなやり方があり、目的や抽出する成分によって使い分けられます。
ここでは、圧力や回数の違いによる蒸留の種類について解説します。
圧力を変える蒸留のやり方
蒸留を行う圧力の違いによって、次の2種類に分類されます。
- 常圧蒸留
- 減圧蒸留
手法の違いにより、熱による影響を抑えたり、効率的に分離を行ったりすることが可能です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 常圧蒸留
常圧蒸留とは、通常の気圧で行われる蒸留の手法です。
加熱によって液体の成分を気化させ、冷やして抽出します。通常の大気圧の状態で行うため、液体の沸点は高くなり、蒸留時の温度も高温になります。
そのため、熱に強い物質の分離には適していますが、熱による物質の変性が起こる可能性があります。
食品や化学製品の製造において、原料の特性を活かした風味や香りを残すために用いられている手法です。
また、シンプルな構造で実施できるため、設備投資が比較的少なく、伝統的な製法として現在も広く使われています。
- 減圧蒸留
次に、減圧蒸留とは通常の大気圧よりも低い圧力のもとで行われる蒸留法です。
圧力を下げることで液体の沸点が低下し、低い温度で成分を気化させることが可能になります。
この方法は、熱に弱い物質を分けるのに適しており、医薬品や香料の抽出などに広く用いられています。
また、圧力を下げることによってエネルギー効率が向上し、従来の蒸留の手法と比べて品質を損なわずに成分を抽出できる点が利点です。
特に、食品業界では、フルーツジュースの濃縮やアロマの抽出などに用いられています。
一方で、圧力を下げる設備が必要となるため、コストがかかる点がデメリットです。
しかし、高品質な製品を得るためには欠かせない技術として、研究開発分野や精密な分離工程で重要な役割を果たしています。
回数を変える蒸留のやり方
蒸留の回数によっても、成分の純度や特性が変わります。
- 単式蒸留
- 連続式蒸留
1回のみの蒸留で特徴を活かす方法と、何度も繰り返して高純度にする方法があり、それぞれの用途に応じて使い分けられています。
では、詳しく解説していきましょう。
- 単式蒸留
単式蒸留は、1回の蒸留工程で目的の物質を抽出する方法です。
シンプルな仕組みで、焼酎やブランデーなど、伝統的な蒸留酒の製造に多く用いられています。
この手法では、発酵液を加熱して気化させ、冷やして液体になったものを回収することで、アルコール成分を抽出します。
単式蒸留の特徴は、蒸留回数が少ないため、風味や香りが残りやすい点です。
しかし、純度の高い成分を得るのには向いておらず、ろ過や熟成といった工程と組み合わせて利用されることが一般的です。
そのため、蒸留後の処理によって最終的な品質が決定されることが多く、職人の技術が重要な役割を果たします。
- 連続式蒸留
次に、連続式蒸留とは蒸留工程を繰り返し行い、高純度の成分を効率よく抽出する手法です。
この方式は、大量生産が必要な蒸留酒(ウォッカ、ジンなど)や石油精製などの工業用途に広く使われています。
連続式蒸留では、蒸留塔と呼ばれる仕組みを使用し、液体を気化させた後、冷やすプロセスを何度も繰り返します。
これにより、不純物を取り除きながら、高純度の成分を得ることが可能です。
連続式蒸留の利点は、優れた精度で分離できる点と、大量生産に適している点にあります。
一方で、設備が大型化しやすく、導入コストが高いというデメリットもありますが、安定した品質を求める産業にとっては不可欠な技術です。
蒸留が用いられる産業

蒸留技術は、さまざまな産業で重要な役割を果たしています。
海水の淡水化からエネルギー産業まで、異なる物質を分離することで、必要な物質を効率的に取り出すことが可能になります。
海水から真水を取り出す
海水淡水化技術として蒸留は広く利用されています。
海水を加熱し、蒸発させた水蒸気を冷やすことで純粋な真水を得ることができます。
蒸留による淡水化は、化学的な処理を必要とせず、安全で信頼性の高い手法として知られており、特に水資源が限られた地域や船舶、宇宙開発などで重要な技術です。
ただし、エネルギー消費が大きい点が課題であり、近年では効率的な蒸留器具の開発が進められています。
蒸留酒の製造
蒸留は、アルコール飲料の製造に不可欠な工程です。
発酵した原料を加熱し、アルコールを気化させて分離し、冷やして液体として回収することで、ウイスキー、焼酎、ブランデーなどの蒸留酒がつくられます。
蒸留のやり方によって、アルコールの純度や風味が変わるため、製法の違いが各酒の特徴を生み出します。
医薬品の製造
医薬品業界では、高純度の成分を得るために蒸留技術が用いられています。
特に減圧蒸留は、熱に弱い有効成分を損なわずに精製するのに適した手法です。
医薬品の有効成分や溶剤を分離・精製する際に利用されるほか、ワクチンや抗生物質の製造プロセスにも関与しています。
また、不純物を取り除くために重要な技術であり、製品の品質向上に大きく貢献しています。
原油の分留
蒸留は石油精製の中心的な技術として用いられています。
原油はさまざまな物質を含んでいるため、異なる沸点を持つ成分ごとに分離することが必要です。
このため、蒸留塔を使用し、温度の異なる層で物質を分離する「分留」という手法でガソリン、灯油、軽油、重油などの異なる石油製品が得られます。
注目の技術! マイクロ波を利用した抽出装置

近年では、蒸留に新しい技術が使われています。
その1つが、兼松エンジニアリングが提供する「マイクロ波を用いた抽出装置」です。
以下のような特徴があります。
- 高い抽出品質:低温かつ減圧環境で抽出を行うことで、熱に弱い香り成分も逃さず、高品質な精油や芳香蒸留水を得ることができます。
- 食品用途にも対応:無添加製法によって天然由来の成分のみを抽出できるため、食品や化粧品用途にも安心して使用できます。
- ランニングコストを抑え高効率を実現:抽出時間が短く、従来のボイラー式水蒸気蒸留装置と比べてランニングコストを大幅に削減できます。
- 環境にやさしい:オール電化仕様でCO₂を排出せず、製造現場の環境負荷を低減します。
兼松エンジニアリングのマイクロ波抽出装置は、原料から有用成分を効率よく抽出できるため新たな可能性を広げています。
参考:https://kanematsu-mwextract.jp/
まとめ

本記事では、蒸留のやり方について、種類や用途などを解説しました。
蒸留は私たちの身近なものの製造に必要な技術として、長年利用されています。
近年では、新たな蒸留技術も生まれており、効率的に高品質な蒸留ができる状況です。
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